243話 冒険者ギルド⑫
「その人がガイウスの友達か?」
友達にしては厳つすぎるんだが。
「友達と言うか、冒険者としての師匠って感じかな。」
「ジェシーです。先程の模擬戦でスレイヤーの方の実力を見て、感服しました。若輩者ですがよろしくお願いします。」
野太い声に似合わず、丁寧な口調と柔らかい物腰だった。
「タイガと呼んでください。こちらこそ、よろしくお願いします。」
礼儀には、礼儀で返すのが日本人の美徳だろう。
「その4人で良いのかな?」
バルトールから声がかかったので、他のメンバーを見回してみる。全員が同意を示していた。
「はい。この4名でお願いします。」
移籍のための手続きがあるので、4人はバルトールと事務所の方に向かった。
俺はバルトールの好意で連絡用の水晶を使わせてもらい、スレイヤーギルドに異常がないか確認をする。
応対してくれたリルによると、あれ以降は魔族や魔物に動きはないらしい。
「4~5日後くらいには戻れると思う。9名ほど協力者ができたから、連れて帰るよ。」
「わかったわ。気を付けてね。」
数日ぶりに話したが、すごく懐かしい感じがする。リルが癒し系だからだろうか。
「何事もなくて良かったです。」
スレイドも留守の間に何か起こらないか気になっていたのだろう。
「そうだな。ところで、この人数は馬車に乗れるのか?」
「あ···。」
馬車は10人乗りだし、荷物もあるので全員収容は無理だろう。
「もう一台調達しましょうか?」
「それは良いけど、精霊魔法を動力とした馬車のスピードとアンバランスだろう。馬を数頭手配した方が良くないかな?」
精霊魔法を動力とした場合、比較をする馬車を引く馬の頭数にもよるだろうが、おおよそ2~3倍の速度を誇る。
10人乗りの馬車ならコーチと呼ばれるタイプの4輪大型馬車となり、通常なら4頭以上の馬で引かないと長距離の旅は難しい。それでもスピードは時速10キロ以下しか出ない。スレイヤーギルドに帰りつくまで1週間以上かかってしまう。




