241話 冒険者ギルド⑩
唖然とするギャラリーの中、バルトールが終了の合図を出した。
「スレイヤー2人の圧勝だ。冒険者はこれを機に意識を改めるがいい。」
項垂れる者、溜め息をつく者もいたが、何人かが拍手を始めた。やがてそれは冒険者全体に広がり、雰囲気が一変する。
俺は笑顔で会釈した。
この拍手は自分達の現状を素直に見つめ直せる証拠だ。今後、冒険者達は停滞から躍進に向かい、強くなっていくだろう。
「一つ質問をさせてくれ。先程の魔法を消滅させた技は何なのだ?」
バルトールが質問をしてきたが、素直に答えて良いか迷う。隠すものでもないだろうが、説明がややこしい。魔力がない理由を話すと、別の世界から来たことまで説明をしなければならないかもしれない。
「俺の固有スキルです。マジック·ブレイカーと呼んでいます。」
珍しいスキル持ちだと答えておくのが無難だろう。
「なんと、そのようなスキルがあるのか···良いものを見させてもらった。」
「このスキルの代わりに、俺には魔法が使えないんですよ。万能なものではありません。」
「と言うことは、魔族と相対する時も武芸だけで闘う必要があるわけだな?」
「ええ、そうです。」
「なるほど。武芸だけでは足りない戦力を補強するのが魔法、と言うのが常識だ。そのスキルは一見最強に見えて、その実、誰にでもあって良いものではないな。」
「魔族や魔物には飛行するものもいます。魔法は絶対的に必要ですよ。」
バルトールは納得したようだ。
俺の能力が必ずしもチートなものではないと思ってくれればそれで良かった。これで冒険者達も、ヘタに素性を勘ぐったりはしないだろう。
「何にせよ、君達の勝ちだ。ランクに関係なく5名ほど連れて行くが良い。」
そんなにくれるのか。
ありがたいことだが、俺が選別するには誰がどんな奴なのかを知らなすぎる。
「ケリー、セイル、ついでにガイウスが選考してくれ。」
「わかりました。」
「オッケー!」
「ついでって···ひどい。」




