238話 冒険者ギルド⑦
スレイドはランクAのスレイヤーだ。
彼が言ったように、同じランクであれば3人の冒険者を同時に相手取ることができる、というのは誇張ではない。
謁見の時に俺と闘った騎士団員は、全員が冒険者のランクS相当の実力があると、ターナー卿からは聞いている。
それならば、ランクSが12人であったとしても俺が負ける道理はない。魔法も使えず、警棒を振り回すというのはいつもの通りだ。
「問題ありません。」
「···わかった。では10分後に始める。」
「ケリーやセイルは仲の良い冒険者がいたら、引き抜きを考えてくれていいぞ。」
「ほんとに?やった。」
「さすがですね。負ける可能性を感じられません。」
冒険者ギルドから誰かを移籍させるのであれば、強さよりも人間性を重視したかった。仮にランクSを連れていったとしたら、そいつはスレイヤーとの実力差に悩み、自滅するか逃亡する可能性がある。井の中の蛙ではないが、一つの枠の中で自分の実力にプライドを持った奴は、そうなる傾向が強いのだ。
「タイガさん、僕には聞いてくれないんですか?」
「·····ああ、ごめん。ガイウスは友達がいないタイプだと思って。」
「ひどっ!?僕にもいますよ、友達くらい。」
「じゃあ、後で紹介してくれ。楽しみにしとくよ。」
こちらの陣営は、なごやかな雰囲気で開始の合図を待つことになった。
「そろそろですね。」
開始1分前にスレイドが声をかけてきた。
「ああ。ずいぶんと目つきの悪い冒険者が揃ってるな。」
「····本気で言ってます?」
「何で?」
「そりゃあ、こんな状況になれば相手が殺気立ちますよ。」
「なめられてると感じてるからか?闘いに感情を持ち込むのは二流のすることだ。」
「···そうですね。」
スレイドは諦めたような表情をしている。何か間違ったことを言っただろうか?
「出だしはどう予想する?」
「魔法の集中砲火でしょう。」
「だろうな。俺が前に出て受けるから、壁に使ってくれ。」
「良いんですか?」
「どうせ効かないからな。」




