20話 スレイヤー登録
アッシュが国内最強のスレイヤーだと聞いても意外性はなかった。
強さを目の当たりにしている訳ではないが、普段の動きを見ているだけで手練れであることは理解ができる。
俺の身体能力が以前の世界の時と同等であったなら良い勝負ができただろう。当然、魔法抜きでの話だが。
「タイガ、こちらの席でスレイヤー登録をしてくれ。それが終わったら模擬戦をする。」
アッシュはそう言って階段を上っていった。
「ではこちらにおかけください。」
ギルドの職員に席を進められて座る。
リルとフェリは「あとでね。」と手をふって奥にあるカフェスペースに向かった。
「この書類に記入をしてもらえますか?」
実直そうな女性職員から差し出された用紙に必要事項を記入していく。
「住所はまだ決まってないんだけど···。」
住所記入欄があるのが目に入ったので質問をしてみる。
「ギルマスからの紹介なので空欄で構いません。住むところが決まったら追記をしていただきます。」
名前、年齢、住所と魔法属性を書くだけの簡単な書類だった。下部はギルド側の記載欄だったのですぐに記入は終わる。
書類を確認している職員は魔法属性欄を見て怪訝な表情をしていたがそのままスルーしてくれた。
"使えない"って書いたのが不思議だったのかもしれない。
アッシュの紹介だからツッコまなかったのだろう。
「ではスレイヤーの職務について説明をさせていただきますね。」
その後に約1時間に渡る説明がされた。
丁寧に説明をしてくれたので、この世界の知識があまりない俺でも理解がしやすかった。
要点を抜粋すると以下の通りである。
·スレイヤーの職務は魔族や魔物の討伐が主任務であること。
·スレイヤーランク(等級)によって任務が割り振られること。
·報酬については等級に応じた月固定給と、インセンティブ(依頼報酬)が別途任務完遂後に支払われる。ただし、一定期間中に規定の任務数を完遂できなければ固定給支給は凍結される。また、支度金については等級認定後に初回のみ支給あり。
·等級認定についてはギルドの認定官が規定の項目にそって行う。
(各等級ごとの評価ポイントが目標値に達することで等級認定を受けることができる)
·討伐認定についてはギルド認定証が対象の魔力を察知して自動的に登録が行われる。固定給や報酬の支払いデータについても認定証に登録がされ、ギルドの指定対象店舗では認定証による支払いも可能。
などなど。
「認定証について教えて欲しいのだが、これは魔力を使って機能するのかな?」
認定証は元の世界で言う身分証IDや銀行のカードなどの機能を兼ね備えている。
非常に高度なシステムだと思う。
しかし、もし魔力が必要であるのならば俺には使いこなせない。
「認定証には魔石が埋め込まれています。3年に一度くらいは交換が必要ですが、認定証自体が必要に応じて自動で魔力を発するので問題ありません。」
戦闘で魔力枯渇に陥っても討伐認定は勝手にやってくるのでご安心くださいとも付け加えられた。
こちらの世界にはあまり科学という概念はなさそうだが、すべてを魔力に置き換えて技術が発展していると考えればわかりやすいのかもしれない。




