200話 謁見⑨
残りはあと2人。
仲間の下敷きになっていた奴も何とか立ち上がった。
額に汗を浮かべ、腰が引けている。
弱いものいじめをしている気分になってきた。
さっさと終わらせよう。
そう思って最速で動いた。
魔族を相手にする時と変わらないスピード。
たぶん、普通の人間には残像しか見えないだろう。それだけスレイヤーの身体能力は圧倒的なのだ。
普段から行動を共にしているのであまり考えはしなかったが、金塊事件で普通の人間との力量差を実感している。
目の前の騎士団員の実力は確かに高い。
だが、彼ら5人が相手なら、パティ1人でも難なく倒すことができるだろう。手加減ができるかどうかはわからないが。
スレイヤーは周りの実力が段違いのため、基準となる強さが違いすぎるのだ。
目の前の騎士団員の個々の実力はオーク一体よりは上だろう。しかし、オーガを倒すためには複数人が必要となるのではないか。
俺自身はオーガと闘った事がないのではっきりとしたことは言えない。あくまで推測での話だが、ほぼ間違いない気がする。
騎士団員2人の意識を奪うのに時間はかからなかった。
俺の動きについてこれないのだから、すぐに背後をとられて当て身を受け、昏倒する。
なぜ実力を試すような真似を国王が今のタイミングで行ったのかはわからないが、メイドさん達が選んだチャラ男服を汚すこともなく、戦闘は終了した。
騎士団には何のメリットもなかったはずだ。
むしろ、恥をかかされてジョシュアのようにスレイヤーを嫌う奴が増えるかもしれない。
なんか憂鬱だった。
口を開けて唖然とする上位貴族達。
そのような中で、拍手をする者がいた。
国王陛下だ。
「さすがと言うべきか。それとも騎士団の不甲斐なさを嘆くべきか。ジェラルド、そなたはどう思う。」
「スレイヤーの実力が秀でていると、改めて実証された訳ですな。騎士団が弱いわけではないでしょうが、あくまで対人間レベルでの話。これを機に、驕りを捨てて全体を底上げするようにターナー団長にはがんばってもらいましょう。」
ジェラルドって誰だ?と思っていると、口を開いたのはチェンバレン大公だった。何か含みがあるような話をしている。
「ふむ、ターナー団長よ。そなたが言っていた通り、今の騎士団のレベルでは魔族に対抗する力はないようだ。その為にスレイヤーの存在意義があることが再確認できたとも言える。事前に話していたように、協力体制を敷くが良い。」
「御意にございます。」
上位貴族達の中に並んでいたターナー卿が答えた。
ああ、何かようやく話が見えてきた。




