198話 謁見⑦
国王の質問タイムはまだ続いた。
「そなたは素手で魔族を倒したと聞いているが、本当か?」
ああ···このおっさんは好奇心でそんなことを聞いている。目がキラキラと輝いているからわかりやすい。
「事実です。」
面倒なので手短に答えた。
「ふむ。」
満足そうに頷いた国王は徐に片手を上げた。
騎士団員が5名。
走り寄って来て俺を取り囲んだ。全員が手練れのようで、屈強そうな体格と隙のない動きをしている。
「悪いが、実力を試させてもらおう。その者達を倒してみよ。対人戦闘に置いて選りすぐりの者達だ。」
意図がわからない。
場の雰囲気にやめてくれとも言えず、成り行きに任せた。
「···わかりました。」
ゆっくりと立ち上がった。
相手は全員が剣を所持している。
刃がない修練用のものなのかはわからない。
ただ、殺気は感じた。
これってヤバい状況なのか?
それともただの戯れか?
考えるよりも先に動いた。
こちらは素手だが、敗ける気はしない。
一番近くにいた相手との間合いを詰める。およそ5メートルの距離を二歩で駆け、前蹴りを胸元に入れた。
両腕でガードをされるが、そんなもので防がれるような軟弱な蹴りは入れない。
ドンッ!
ガードの上から直撃させてふっ飛ばす。押し出す感じで放ったので、骨にはヒビが入る程度のダメージしかないはずだ。
蹴りを食らった騎士団員は10メートル後方まで飛ばされて、太い飾り柱に激突して動きを止める。
その様子を見ていた他の騎士団員は、動きを止めて慎重に間合いを取り始めた。
格上の相手をする時は慎重さも大事だが、数少ないチャンスを逃すべきではない。先ほどの攻防の中で一斉攻撃をしかけていれば、少ないながらも勝機はあったかもしれない。
既に彼らは俺に対して脅威を抱いた。
そんな奴等に敗ける道理はないのだ。




