197話 謁見⑥
謁見の間に入った。
この大広間は外交使節団を招いたり、叙勲のために用いられる。重厚感の溢れる大扉を潜ると、真っ直ぐにのびたレッドカーペットと、色鮮やかで厳かな装飾が視界に入り、その国力や王の権威の大きさを十分に感じさせた。
華やかな広間の両脇に数十人の貴族達が立ち並ぶ。
正面奥には玉座に座る国王がおり、静かにこちらを見据えている。
所定の位置で立ち止まった俺は膝を着き、慣習とされている挨拶を行った。
「お初にお目にかかります。スレイヤーギルド、ギルドマスター補佐のタイガ·シオタでございます。招聘に応じて参上致しました。」
作法なんかはあまりよくわかっていない。つい先ほど、ターナー卿に手解きを受けた挨拶をそのまま行っただけだ。
「君も我々と同じ武人にあたる。あまり大仰な物言いは必要ないだろう。」
そのアドバイス通りに簡潔な挨拶にとどめた。
「面をあげよ。」
低い声音。
謁見の間を歩く時に国王の顔を見ることは不敬にあたる。本人の許しを得てから初めて見るのが慣わしだ。
まだ40歳前後と若く見えるが、威厳があり、覇気すら漂う。
「そなたのことはチェンバレン大公とターナーから聞いておる。鋭い頭脳と、アッシュ·フォン·ギルバートを凌ぐ武芸家としての腕前を持つそうだな。」
何と答えるべきか迷った。
率直に「はい」などと答えると生意気に見えるかもしれない。謙遜するにも大公やターナー卿の言葉を否定するようで躊躇われた。
「お二方に評価をしていただいたことを素直に嬉しく思います。まだ修行中の身ですので、有り余る言葉だと見に受け、以後も精進致します。」
無難な言葉で返してみた。
「ふむ。謙虚なのか、自我を見せぬのかどちらだ?」
また難しいことを投げてくれる。
「謙虚だ」と答えれば逆に傲慢に聞こえるかもしれない。かと言って、形式的に答えれば腹を見せない野心家だと感じさせるかもしれない。こういった言葉のやり取りで腹を探るのは権力者の得意分野なのだ。
「私は田舎出の無作法者です。率直に申し上げまして、陛下のお言葉に満足いただける返答に思い至りません。敢えて申し上げるのであれば、本音を腹に隠して人と接することは苦手であるとお伝えをさせていただきます。」
暗に言葉での探りあいは嫌いだから、変なやり取りはやめてくれと伝えてみた。
「ハッハッハ。そうか、アッシュとは違う意味での腹黒さを持っている。本音は探らせないから余計な詮索はするな、と言うことだな。」
何でそうなる。
そう思って国王の顔を見ると、心底おもしろいという表情をしている。
ここにもやりにくいおっさんがいた。




