18話 閑話~Side フェリ 運命の出会い!?③~
驚いたことに黒髪の男は素手で魔族を倒してしまった。
後で話を聞くと異世界から来たエージェントだそうだ。
エージェントというのが何なのかはよくわからないが、人々を守護するという意味ではスレイヤーと存在意義が似ている気がする。
魔力を持っておらず、そのためなのか魔法がまったく効かない体をしている。回復魔法であるヒールすら何の役にも立たないのだ。
異世界から来たのでそういった概念がないのかもしれないが、大ケガや大病を患った時にはどうするのだろうか。
そんな状態で彼は私を助けるために魔族と戦ってくれた。
突然知らない世界に飛ばされて不安で仕方ないはずなのに。
見ず知らずの私を助けるために。
「タイガは魔族の存在を察知して、脇目も振らずに助けに向かってくれた。あの時に躊躇していたら間に合わなかったかもしれない。」と兄からは聞いている。
「彼がいなければ死んでいたかもしれない」かと思うと、改めて恐怖が襲ってきたが、それ以上に別の意味で心臓が高鳴った。
タイガは爆発に巻き込まれた時の格好のままで、ボサボサの頭と血や煤で汚れたままの服装をしている。
そんな格好だからこそか、他の部分が尚更際立って見えた。
背が高く、細身ながら鍛え抜かれたムダのない体格。
洗練されたたたずまい。
柔らかい物腰と落ち着いた声音。
どれもこの世界の男性とは一味違った。
フェリは初めて異性に対して
「かっこいい。」
と感じたのであった。
閑話は今回で終了。
次回から本編再開です。