188話 王都への招聘⑨
「俺達はスレイヤーギルドから派遣されて来ている。これまでに長年に渡って魔物の存在が確認されていない地域で異変が起きた場合、国の脅威として徹底調査をすることになっている。」
「スレイヤーギルド!?···いや、だから勘違いだと言ってるだろ!」
「目撃者は君か?」
「そうだ!狼と勘違いしたんだ!!」
今度は守衛の男が額に汗を浮かべている。おもしろい。俺は基本的にドSだぞ。
「ほう、おもしろいことを言うなぁ。勘違いとどうしてわかるんだ?ウォーウルフと狼の違いを言ってみてくれないか。」
「あ···それは普通の狼と同じ大きさで···見た目も変わらなかったから···。」
「ウォーウルフにも個体差はある。そもそもが普通の狼と見分けがつかないのになぜ魔物が出た!とか、やっぱり普通の狼だった!とか言えるんだ?」
「···いや···それは···遠かったから···。」
「遠目に見て狼の群れが見えたと言うのならわからんでもないが···長年に渡って魔物が出たことのない地域に住んでいる君がなぜ魔物と勘違いをする?何か違いがあったんじゃないのか?」
「うぅ···。」
男の顔には滝のように汗が流れていた。
「もう···間違いだったって言ってるだろ!帰れよ!!」
「間違いでも狼が十数体出たのなら冒険者ギルドの領分だ。狼を退治しておく必要があるだろう。」
「い···いや···狼も見間違いかも···。」
「そうはいかない。魔物が出現した可能性が少しでもあるのなら、俺達は徹底調査をしなければならないからな。狼の場合でも冒険者が同じことを言うだろう。」
「····あれは···嘘なんだ!ちょっと遊び半分で冗談を言ったら大事になっただけだ!!」
あ、墓穴を掘りやがった。
どう見ても村人ではなく、荒事が得意そうな野郎が「遊びで嘘をつきました。」なんて言っても信じるバカがいるか。
「ふ~ん。嘘ねぇ···それは大変だな。知っていると思うが、魔物に関する虚言は国への反逆罪と見なされて即死罪だぞ。」
「えっ!?···嘘だろ····。」
はい。
嘘です。
そんなわけないじゃん。
「理由を教えてやろう。まず、俺達スレイヤーが担当地域に魔物の脅威がありながらも、新たな不穏分子の調査のために戦力を割いて動いた。これにより、多くの人間が身の危険に晒されたことになる。通常は、虚言によりギルドの人間が動かざるを得なかった場合、多額の賠償責任が課せられるか、拘束をされて裁判にかけられる。今回の場合は自分で虚言である事実を述べただけでなく、俺達を門前払いにしようとした。多くの人間を混乱と危険に陥れた事を自覚しているのに、反省の色が全く見えない。再犯の可能性もあるし、スレイヤー条項124の第二法に照らし合わせて、時間をかけずに処理をさせてもらうことになる。」
俺は殺気を放ちながら蒼龍を抜刀した。
今言ったことはすべてハッタリだ。説得力を持たせて尤もらしく話すことで相手は恐怖する。スレイヤー条項?はっ、何それ。
「···ひぃぃ···助けてくれっ!」
男が逃げ出そうとしたので、襟首を掴んでそのまま締め落とした。




