185話 王都への招聘⑥
「それで、深刻な顔をしてどうかしたのか?」
「近くの村で魔物が出たそうです。」
「魔物?」
「3日前に冒険者ギルドに依頼が入ったんです。ウォーウルフが目撃されたと。」
ケリーがスレイドから話を引き継ぎ、説明を始めた。
「その数は10体以上だそうです。被害を恐れて村の特産品の運搬が滞っているらしく、至急案件としてギルドに話があったのですが···いろいろと腑に落ちない内容なのですよ。」
「ウォーウルフと言うと、狼の狂暴型だよな。人への被害は出ているのか?」
ウォーウルフはこちらの世界に来て一番最初に遭遇した魔物だ。2メートル近い体長で、動きがかなり速い。
「ありません。目撃者も同じ人間が二度見たと言っているらしく、他の村人は確認ができていないそうです。」
「腑に落ちない点と言うのは他にもあるのか?」
「まず、対象の地域では魔物の目撃情報がこれまでには一度もありません。山深い所でもないですし、もし獲物を求めてどこかの山から出てきた魔物だとしても、村への襲撃がないのが不自然なんです。」
魔物もいろいろだ。
ウォーウルフの場合は野獣に近い。食料を求めて来たのであれば、その数を考えても真っ先に村を襲うだろう。確かに不自然だ。
「ケリー達はたまたま俺を見つけてアドバイスを求めてきたんです。ギルマス補佐はどう思われますか?」
「人為的な謀略の可能性が高いんじゃないかな。まず、ウォーウルフを2度も目撃して無事に帰ってこれたことが不思議だ。地形にもよるが、ウォーウルフは鼻が良い。目視できる距離なら存在を気づかれる可能性が高い。これは目撃者に状況を確認すれば嘘かどうかはすぐにわかる。次に、これまでに魔物が確認をされていない地域というのは、そこに来る理由がないからだ。普段の生息地で何かがあったにしても、これまでに目撃事例のない場所で発見される可能性は低い。」
「と言うことは、タイガさんはウォーウルフの目撃は虚言だと思われるのですね?」
「うん。そのつもりで調査をした方が良いと思う。場所はどの辺なんだ?」
「ここから馬で2時間くらいだと思います。」
国王陛下との謁見までにはまだ時間があった。1日くらいの寄り道は大丈夫だろう。
「彼らに同行しないか?」
俺はスレイドにそう言った。




