180話 王都への招聘①
ギルドに戻ると執務室に呼ばれた。
さっきのサドンデスソースの件だろうか···。
「おう、タイガ。戻ってきたか。」
「··················。」
「どうした?」
「声変わりか?」
アッシュの声は野太くハスキーになっていた。
「·····お前がそれを言うか?」
「箔がついてカッコいいぞ。」
「·····················。」
「·····················。」
「···本題に入ろう。チェンバレン大公から連絡が入った。」
「用件は?」
「おまえを王都に招聘したいそうだ。」
「····やだ。」
「国王陛下からの招聘らしい。」
「··················。」
「耳を塞ぐな!」
仕方がない。
真面目に話をしよう。
「何で国王陛下なんだ?」
俺はため息をつきながら聞いてみた。正直なところ、国家権力にはあまり関わりたくない。
「それは知らない。王政の国で国王の招聘を断るわけにはいかないぞ。」
「断ったらどうなる?」
「反乱分子として拘束されるだろうな。」
「民主主義は偉大だな。」
「···民主主義ってなんだ?」
「いや···気にするな。聖属性魔法士の招聘の件もあるし···行くよ。」
ここで断るとアッシュやスレイヤーギルドの立場はあまり良いものにはならないだろう。曲がりなりにもギルドの幹部になってしまっている。管理不行き届きでペナルティが課せられるのは想像に難くない。
「同行者だが、魔族の件もあるからあまり人数はつけられない。構わないか?」
「一人で行くさ。」
「さすがにそういう訳にはいかないぞ。道中と王都内の案内役にぴったりの奴がいる。騎士団とも関わりがあるしな。」
国家からの招聘となると、期限内に確実に出向かなければならない。監視役と言う訳ではないだろうが、案内役を付けるのは必然と言えた。
「誰だ?」
「スレイドだ。あいつは騎士団第一師団長であるガリレオ·カーハート侯爵の次男坊だからな。」
師団というのは騎士団の編成単位の一つだ。数千から数万の騎士を抱える。下部組織には旅団や連隊があり、その下に大隊、中隊、小隊が連なる。
「スレイドが案内役にぴったりと言う理由は?」
「あいつの兄貴は騎士団の大隊長なんだが、スレイヤーをあまり良くは思っていない。おまえが一人で王都に行くと、邪険にされるかもしれん。」
「スレイドの兄貴とは知り合いなのか?」
「ああ。王都の騎士学校で同期だった。くそ真面目な奴だったからよくからかったものだ。」
···それって、おまえのせいでスレイヤーを嫌いになったパターンじゃないのか?
いやいや、思い出し笑いしてんなよ。




