174話 スレイヤーギルドの改革⑪
炎撃2つに氷撃1つ。
俺に一直線に向かってくる。
咄嗟にバーネットの盾を拾って炎撃2つが交わるポイントに投げ、氷撃はスライディングの要領で下から潜り抜けた。炎撃は盾に当たり、共に弾ける。そこに氷撃が加わり、盾を破壊した。
普段なら魔法が当たろうがお構い無しだが、この模擬戦だと触れるとダメージカウントされる。
本来ならスピードで翻弄して、同士討ちの危険があるポジションに潜り混んで動きを封じることが
できたはずだが、近接戦闘のスペシャリストが揃うと簡単には事が運ばない。
先に前衛を潰すことにした。
右翼から攻める。
残った前衛はスレイドがやられたことで狼狽している。この模擬戦ではそういった精神的な部分も鍛える意味が含まれているが、まだまだ甘いようだ。
俺は動きが鈍くなったスレイヤーにフェイントを交えながら接近し、1人ずつ意識を刈り取った。
途中で中衛が魔法を放とうとしてきたが、スレイヤーを盾にすると戸惑いが発生する。混戦になってしまうと、直線的な攻撃となる魔法はここが弱い。風撃による軌道の変化による攻撃が有効な状況であることを理解しやすいだろう。
この模擬戦は、上位魔族と近接戦になった時の対処方を学ぶ場だ。
普通の魔族であれば、物理攻撃のコンビネーションだけで討伐は可能かもしれない。だが、混戦時に昨日のような剣術に長けた上位魔族に懐に入られると、仲間が邪魔になり動きが制限される。
風撃による補助で、変則的な魔法攻撃が可能となれば強力な支援ともなり、狭い範囲での乱戦でも連携で何とかなる可能性が高まるのだ。
これを身をもって感じてもらう事ができなければ、この模擬戦の意義はなくなってしまう。
何事も経験と反省、そして改善が重要なのだ。
既に3分の1のスレイヤーが離脱した。
残っているのは中衛と後衛。
厄介なのはアッシュだけだろう。
俺は左右に体を振りながらアッシュへと向かった。
おっ!という顔をしたアッシュが満面の笑みを浮かべた。
警棒を捨てて無手による打撃で勝負を挑む。
他のスレイヤーはアッシュが巻き添えになることを危惧して魔法を使えない。
来いという仕草のアッシュも望むところのようだ。
さて、お互いの素手での戦闘技術を試してみようか。




