172話 スレイヤーギルドの改革⑨
「模擬戦と言っても、俺は武器を持たない。そちらの後ろにフラッグを立てる。それを取りに行くから全員で阻止してくれ。魔法も武器も本気で使ってくれていい。どちらでも攻撃が5回触れたら俺の敗け、フラッグが奪われたらそちらの敗けだ。」
「ギルマス補佐は攻撃はなさらないのですか?」
ホッとした様子でセティが聞いてきた。
「しない。」
安堵のため息がスレイヤー達から漏れた。
15人もいてそれもどうかと思うが···。
「ちょっと待ったぁ!」
来たよ。
模擬戦という言葉に反応した奴が。
「俺たちもそれに混ぜてくれ。」
「················パティ、奥さ···。」
「いやいやいやいやいや!違うぞ。そのメンバーだとおまえを止めるのは難しい。それにこちらのメンバーが加われば、全体でのレベルアップにつながるだろ?」
アッシュは必死だった。
まぁ、言っていることは間違いじゃないが···こいつの頭の中は本当にどうかしてるんじゃないのか?
「しょうがないなぁ。じゃあ、ルール変更だ。アッシュは武器なし、俺は警棒を使うぞ。」
「「「「「えっ!?」」」」」
スレイヤー達全員が「嘘だろ!」って感じでアッシュをガン見した。
「OKだ!」
即答しやがった。
見ろ、スレイヤー全員の微妙な表情を。
修練場の端に高さ3メートルのフラッグが立てられた。
布陣としては、後衛の真ん中にアッシュ、その両端にミシェルやテスなどの魔法士が控えている。中衛にはステファニー、セティといった魔法剣士、前衛にはスレイド、パティ、バーネットといった近接戦闘のスペシャリストが揃っている。
正面から見るとなかなかの面子だ。魔族4体以上の圧は感じられる。
これは本気でやらないと敗けるな。
カキィーン。
伸縮式警棒が心地の良い音を鳴らしながら伸びた。
ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュン!
準備体操代わりに両手の警棒を振り回す。
回数を重ねるごとに風を切る音が連なり、それに比例してスレイヤー達の顔が青ざめていく。
笑っているのは一番後ろにいる戦闘バカくらいだ。
「さあ、いこうか!」
俺は開始の合図を出した。




