167話 スレイヤーギルドの改革④
次の日の午前中に昨夜のメンバーがギルドの会議室に集まった。
リルとフェリ、それにテレジアについては、学院に行っているので欠席となったが、あとから俺が話すので問題はない。
「さてと。まず始めに科学についての簡単なレクチャーを始める。魔法に応用するための基礎だからちゃんと聞いてくれ。もし寝るような奴がいたら、横のテーブルにある液体を口に注ぎ込むから注意をしてくれ。」
「···タイガ、質問だ。その赤黒い液体はなんだ?」
アッシュが訝しそうに聞いてきた。
「知りたかったら試しに寝てみると良い。」
俺はにっこりと微笑んだ。
この脅し···警告のおかげで、タイガの講義で寝たスレイヤーは誰1人としていなかった。
「···と言うわけで、空気には酸素が含まれている。風撃を炎撃に掛け合わせると、その中に含まれている酸素が燃焼を促し、さらに風の勢いで炎撃の威力が高くなると言う訳だ。」
俺は学校の授業のように、会議室の前にある黒板に図を描いて説明をした。
エージェントのブリーフィングも図を活用して行うことで、短時間の理解を促すことができる。脳筋どもには口で何を言っても時間がかかるだけだ。百聞は一見にしかずという諺は本当なのだ。
「先生!それが昨日のテスとケイガンが使った魔法なんですね?」
パティが手を上げて発言した。
ご丁寧に赤いフレームのメガネをかけている。
「そうだ。」
うん、似合うぞパティ。
かわいいし、良いと思う。
でも、俺は先生じゃないぞ。
「理屈はわかりました。それで、なぜ炎撃は青い炎になったのですか?···先生。」
うん。
良い質問だ、セティ。
でも、先生じゃないからな。
「遊離した炭素が輝いて見えるのが赤い炎、その炭素と釣り合いのとれた酸素が反応した状態が青い炎だ。」
「え··と···炭素とは何ですか?」
「炭素とは炎を作るための燃料と思えば良い。魔法で言えば、魔力がそれにあたるのかな。」
「では、青い炎とはどのくらいの威力があるのですか?」
「風の強さや、炭素と酸素の量のバランスにもよるが、赤い炎は1000度以下、青い炎は1700~2000度くらいの温度になる。単純に1.7~2倍。それに風による勢いによりプラスアルファの攻撃力だと考えたら良いと思う。」
話を聞いていたスレイヤー達は全員が呆気に取られていた。
理解が追いついていない者、単純に攻撃力の加算具合を聞いて驚く者など様々だろうが、今の単属性による魔法よりも格段に強い魔法が使えることは何となくだがわかったようだ。




