最終章 You Only Live Twice 104
声帯を通した竜孔流は、高振動を伴った裂帛の雄叫び
である。
一瞬硬直したビルシュを確認し、すぐに第六の竜孔アージュナーに竜孔流を注ぎ込む。鎌首のようにこちらを狙っていた触手が動かないのを見越して、その刹那にやるべきことをやってしまう。
アージュナーは理性から感性に切り替える孔である。そして、第七のサハスラーラをも連動して活性化させた。
第六のアージュナーで感性による認識を行い、第七のサハスラーラで意識を解放させる。
これにより、感覚視で見る物質は視界とは異なる反応を示す。
見えた。
感覚視による核の位置の特定。
しかし、今の硬直状態を抜け出せば、すぐに核は移動してしまうだろう。
そのタイミングまでわずか数秒に過ぎない。
「アイーン!」
さらにアイーンを連発し、奴の硬直時間を持続させる。
同時に両手にHG-01を顕現させて引き金をしぼった。
ドッパァーン!
重なり合う銃声。
そして一発は大腿部に突き刺ささった触手を破壊、もう一発が核へと向かっていった。
しかし、わずかなタイミングで核が移動してしまったようだ。
ビルシュのゲル状の体を破壊しながらも、核はそこから逃れてしまった。
俺は大腿部を開放されたことにより体を捻りながら移動する。
ビルシュが新たな触手を生成してまた俺を狙ってきた。
コンマ何秒かの攻防が再開する。
頭で考えるのではなく、感覚と反射で互いに攻守に移行していく。
こういった戦いは大なり小なりミスをすれば終わりだ。さらに流れを掴んだ者が押し切ることで勝利につながる。
右手のHG-01を連射しながら、左手はSG-02に持ち替えて次から次に生成される触手に対処した。
核は高速で移動し、HG-01が吐き出す50口径弾の破砕に追いつかれることなく逃げ惑う。
全弾を撃ち尽くしたHG-01をもう一丁と入れ替えてさらに連射するが、ビルシュの体が逃げ惑う核を誘導するかのようにあらゆる方向に伸びていく。
進行方向を予測して撃つのは無理だろう。
ビルシュとて、核を破壊されては立て直しがきかないと見える。
逃げに専念するビルシュか、残り数発を撃ち切りそうな俺か。
ほんの数秒で優劣が決まりそうな瞬間だった。
「!?」
いや、甘かったようだ。
いつの間にか背後に触手を伸ばしていた奴が、俺の胸を貫く方が早かった···。




