最終章 You Only Live Twice 93
「そうか。喜ばしい事実とはほど遠いが、これまでより経緯が明確になってよかったよ。」
半分は皮肉、そして半分は本心である。
まだ何か隠しているものがあるかもしれない。
しかし、もう十分だった。
この世界が元の世界とは異なる次元にあるのか、それとも広大な宇宙のどこか別の惑星に位置するのかはわからない。
ただ、現実と向かいあえば、今の俺はここに立ちビルシュと対峙している。
エンシェントドラゴンの系譜であるとか、執行者に選ばれただとかはどうでもよかった。
単に住む世界が違っても、共通するものやつながるものがあるということにすぎない。
微妙に異なる神や悪魔の存在など、複雑に考えれば混乱をきたすものでしかないのだ。
不必要な情報はぼやかして、自分にとって重要なことだけに目を向ければいい。
「そんな物分りがいいところを見せても無駄だよ。」
「どういう意味だ?」
「結局のところ、僕らは争うためにここにいる。そうだろう?」
「争って勝てるかどうかは重要なところだけどな。」
「随分と殊勝なことを言うね。」
「俺はすこし特別な経験をしてきただけの人間だからな。」
「神と争っても勝てない···か。」
「亜神や魔神は墮神に勝てるのか?」
同じ神格でも大きな違いがある。
神界にいるのは紛れもない真神というやつだ。墮神は神界から堕ちた真神をいう。
一方、亜神や魔神はもともと人であったものが何らかの経験や実績で昇華し、神格を得るものだったはずだ。
そう考えると、俺は少し亜神や魔神の領域に足を突っ込んだ人間という程度だろう。
では、ビルシュはどうなのか。
精神はルシファーと同じく墮神であるベリアルかもしれない。
肉体はハイエルフのままと考えていいのか。
「神もいろいろさ。真神であっても格が低ければ大したことはない。亜神や魔神も同じようなものだと思えばいい。まあ、そもそも真神は神界にいるからこそ真神なんだけどね。」
今、ビルシュが重要な言葉を漏らした気がする。
真神は神界にいるからこそ存在する?
それは、下界に来たときに実体をなくすからではないのか?
かつて猛威をふるった悪魔王の中には、堕天したものも少なからず存在したという。
奴らは下界で実体を得たということなのだろうか。
···そう考えると、目の前のビルシュはハイエルフという実体を伴った人間と考えてもよい気がした。




