159話 レイド vs上位魔族⑮
かなり前に努力はしてみたのだ。
だけど、コントロールが良くなることはなかった。
そんなことをしても自分の強みが消えてしまうだけだからとすぐに諦めたとも言える。
「魔法士やスレイヤーとしてよりも、人間として未熟なことに気づくべきだな。」
うつむき、無言のままのミシェルに容赦のない言葉が突きつけられた。
ミシェルは期待をしていた。
強い魔法が打てるから仕方がないというような言葉を言ってもらえると。
「何のためにスレイヤーは存在する?」
ショックを受けたままのミシェルにタイガは質問をする。
「····魔族や魔物を倒すため···ですか?」
「そうだ。じゃあ、それは何のためだ?」
ハッとした表情をしてミシェルはタイガを見上げた。
「魔族や魔物から人を守るためだ。それは一般人だけじゃない。仲間であるスレイヤーも同じだ。」
「·······················。」
「強大な力や魔法を持つことは悪いことじゃない。使い方を間違えさえしなければ、より多くの人を守ることができる。」
その通りだ。
この人の言っていることは間違いじゃない。私は···ただ、力だけを求めていた。
「力自慢は時として弊害を生む。個人の力が強くても無力感に苛まれる。かつての俺がそうだった。」
「·····どうやってそれを克服したんですか?」
タイガがこちらを見てフッと微笑んだ。
「自分の力を伸ばすことよりも、チームとして強くなるためにはどうしたら良いかをまず考える。その答えが出たら自分の役割りと、その役割りを果たすためにはどうしたら良いかを考える。あとは努力だ。それができれば、必然的にもっと強くなれるだろう。」
ミシェルは長い間燻っていた霧が晴れたような気がした。
だからこの人はこんなに強いのかと、改めて思えた。
「努力してみます。目的を見失わないようにしっかりと考えながら。」
ミシェルの決意は表情に現れていた。




