最終章 You Only Live Twice 65
硬質ウレタンとは、元の世界では自動車の衝撃吸収材や住宅の断熱材などにも使われるようなものだ。
少し異なるが、発泡スチロールを木材と同等かそれ以上の硬さにしたもので、遮音性や断熱性などに優れているものと思えばいい。
複数の薬剤を混合し発泡させて作る樹脂素材なのだが、クリスがこちらの世界で何を素材として用いたのかは詳しく知らない。いや、厳密にいえば何かの説明をしていたようだが、専門用語のオンパレードとウンチクが面倒なので俺の脳内で自動遮音機能が発動した。
科学者が話す専門的な知識はエージェントとしての任務でいろいろと役立つことも多いのだが、クリスのそれは天元突破し過ぎていて本気で聞くと知恵熱が出てしまいそうになる。
決して聞くのが面倒なわけではない。そう、クリスが天才的過ぎて、真面目に話を聞いているのが苦痛なだけというのが本音だ。
え、酷い奴だなって?
そうだな···お坊さんと向き合って、延々とお経を聞かされるのが好きな高尚な方々にはそう言われても仕方がないかもしれない。
皮肉ではないぞ。
俺だってクリスがラップ調で説明してくれたら韻を踏むのだが。
···話がそれたな。
WCFT-改から放たれた硬質ウレタン調のものには、クリス独自の視点からある特徴が与えられていた。
まず、フェリとサキナの協力によりゴーレムでテトリアの足止めを行ったのは、転移や瞬間移動を使われたり、精神体を霧散させて回避されないためである。
ゴーレムごときでそのような役割を果たすことができるのかという疑問を持たれるのは当然だと思うが、そこはテトリアの性格を分析した上での作戦だ。
奴は自信家で、相手の思惑を完全に外させることに優越感をおぼえるクソ野郎でもある。さらに好奇心が強いため、目新しい動きに関しては自分の目で確かめたいと思う傾向があった。これは何度となく戦ってきた中で感じたプロファイリングだったが、どうやらそれは間違いではなかったようだ。
次に、発泡剤を固めて動きを止めることに関しても、霧散して逃げる効果を潰せるだけで転移までは防げない。しかし、ここにクリスの検証によるギミックが投入されている。
この発泡剤にはミスリルの微粒が含有されているのだ。
ミスリルは魔力を通しやすい素材である。それは、神力や霊力に関しても同様の効果をもたらせるというのがクリスの推論だった。




