最終章 You Only Live Twice 64
「うわああぁぁぁ···。」
インカムからフェリのものらしき声が聞こえてくる。
普段は聞くことのできないその声は、おそらく羞恥に悶えているものであろう。
彼女が作った典型的なゴーレムがテトリアに追いすがり、その都度迎撃されていく。
一方、サキナが作った全裸ゴーレムはその間隙を突きながら奴の体へとまとわりついていくのだが、その光景は俺であっても見るに見兼ねるようなものだった。
色や質感は土や砂、岩のような感じではある。しかし、自分によく似ているゴーレムが、全裸でタックルや抱きつきに興じている様など精神的な負担でしかない。
何をどう思ってサキナがあんなものを作り出したのかは謎だ。
「サキナ、LIVE配信は切っているよな?」
「···今切ったわ。」
「今!?」
大丈夫か?
俺自身ではないとはいえ、公然わいせつ罪にならないだろうな···。
「だ、大丈夫よ。ほら、そこまで鮮明に投影されないと思うわ。」
「投影されているサイズは?」
「さ、さあ?」
ああ···。
詰んだかもしれない。
この戦いが無事に終わっても、俺はフルモンティとして語り継がれるのだろうか。
そんなレジェンドに俺はなりたくない。
目の前で繰り広げられる狂宴を見ながら、俺は深く息を吸い込み気持ちを切り替えた。
起こってしまったことは仕方がない。
しかし、様子を見る限りテトリアも全裸で迫り来るゴーレムに及び腰のようだ。転移で逃げたくても間を置かずにまとわりついてくる裸族に機会を喪失している。
サキナの魔力量の高さゆえか、その数はますます増え続けていた。
状況としては喜劇でしかないが、このチャンスを逃すわけにはいかないだろう。
俺はWCFT-改を顕現させた。
これはクリスにの手によって改良されたWCFTー01である。
高水圧式裁断機と火炎放射器としての機能はもちろん強化されているが、それ以外に接続されたバックパックからある特殊な薬剤の放出を可能としていた。
切り替えレバーの位置を確認し、すぐに引き金をしぼる。
銃口からは白濁としたものが噴射され、テトリアをゴーレムごと包み込む。
速乾性のため、すぐに発泡剤の質感で硬化していくのがわかった。
配合されている薬剤が何かは詳しく知らないが、クリスいわく泡化反応と樹脂化反応を同時に起こして硬質ウレタンのように固めることが可能なのだそうだ。




