最終章 You Only Live Twice 62
このままテトリアにビルシュとアザゼルの関連性などを聞いても、大した答えは出てこない気がした。
口を割らないというよりも、深くは知らないか聞いていても覚えていないのではないかと感じる。
何より、この男の性格を俺よりも熟知しているビルシュが、重要なことを漏らしていないと考える方が正しいだろう。
テトリアは承認欲求が強く、利己的な男だ。
周りのことに配慮などせず、いかに自分が優れているかを主張したいだけなのである。
俺がビルシュの立場だとすると、そのような男に大事なことを話したりはしない。
計略や謀略を立てる上で、テトリアの存在は諸刃の剣でありアキレスのかかとなのである。
「もういい。おまえにはここで終焉を迎えてもらう。」
「ふふん、今の僕を消そうなんて難しいにもほどがあるよ。仮に鎧を壊せたとしても、精神体である実体をどうやって傷つけるつもりだい。」
これまでの戦いで有効打を与えられなかったのはまさにそれが理由だ。
物理でも魔法でも、今のテトリアに致命傷を負わせることは難しいだろう。
しかし、それについては何の対策もしてこなかったわけではない。
奴の精神体はエクトプラズムのようなものだ。エクトプラズムは心霊現象でいう半物質であり、ある種のエネルギー体だといえた。
それに対して物理や魔法で攻撃したところで、煙を相手にする様なものだと考えた方がいい。
それだと有効な手段は限られている。
絶対零度による周囲を含めた空間の凍結、もしくは絶対高温と呼ばれる様な熱による焼失だ。
しかし、現実的にそのような手段を講じることは不可能に近い。
魔法であればそれに近い擬似現象を引き起こすことは可能かもしれないが、それとて魔力や魔法陣、詠唱などを用いることから対策は可能ではないかという推論があった。
魔法陣や詠唱を発動前に解除されるか、精神体を霧散させて回避される可能性が高いというのがマルガレーテたち魔法士とクリスの見解である。
そう考えると、今のテトリアへの対抗策というのは非常に難しいものといえた。
しかし、その課題については早くから思考を重ね、仲間からの協力を得てひとつの策を講じている。
それが不発に終わればまた逃げられてしまう可能性はあった。だが、その場合はルシファーからもらった力を行使することもいとわないつもりだ。




