最終章 You Only Live Twice 57
完璧とまではいかないものの、必要最低限の検証が完了した頃に、接近してくる集団が目視できるようになった。
上空から降下してくる奴らは、小さい点からやがて人型の集団として認識できるようになる。
気配からして、悪魔の集団とそれを率いるテトリアであることがわかった。
事前に打ち合わせていた通り、こちらも各自で行動を開始する。
アッシュ、マルガレーテ、ファフがそれぞれに分散して悪魔たちを誘導させ、残りは俺の後方で待機という配置だ。
おそらくテトリアはこちらに向かってくるだろう。
サキナは俺とテトリアのやり取りを映像化させて、配信する役目を担ってくれる。その際に無防備となるため、フェリやパティは護衛役を買って出てくれたのだ。
今のふたりなら、数が少なければ悪魔の相手も可能だという判断をアッシュがくだしていた。マルガレーテやサキナもそれに頷いていたので任せることにしたのである。
以前のままなら足枷となる可能性もあったのだが、彼女たちも四方の守護者から準加護者としての力を与えられていた。何より本人たちが恐れずにやる気を見せているのだから、俺がとやかく思う必要はない。
「ふたりともサキナのことを頼んだぞ。それと、サキナも状況が悪くなったら配信を切っていいからな。」
「了解。」
「任せて。」
「あなたって、たまに過保護よね。」
三者三様に笑顔を見せながら応えてくれた。
さて、ここからが本番だ。
三人が奴らの視界に入らない位置に移動したのを確認してから、俺はテトリアとおぼしき奴に向けて殺気を送った。
すぐにそれを察知して、奴がこちらへと向かって来る。
悪魔のうち何割かが一緒に来ると思っていたが、どうやら一体だけのようだ。
話に聞いていた通り、黒いフルプレートアーマーをまとっているためわかりやすい。
そろそろサキナの準備も終わった頃だろう。
堕天使グザファンから与えられたあの術は、大きな魔力とそれを制御するための精神力が必要とされる。特に複数の離れた位置への投影は、転移などの神威術に通じるようなセンスが要求されそうだった。
精霊魔法に通じており、遠距離魔法射撃を使いこなすサキナだからこそ可能となる御業なのかもしれない。
そういった固有能力を見越したからこそ堕天使グザファンは、マルガレーテではなくサキナにその術を託したのではないかとも思われた。




