最終章 You Only Live Twice 55
こちらに向かってくる集団と接敵するまではまだ時間がかかりそうだったため、翼に関する能力を検証した。
自分では見えないため、全容がどのようなものかはわからない。他の者いわく、漆黒の美しい翼とのことだ。
枚数は通常展開で3対6枚。
防御への意識を高めると最上段の翼は頭部、最下段の翼は脚部を隠し防護壁となるようだ。残りの2枚は飛行のためのようで、胴体部は自分で守れということだろうか。
そう思っていると、フェリとパティが驚いた表情で声を発した。
「タイガ、翼が···。」
「ん?」
「今、一瞬で倍に増えたよ!」
相変わらず自分では背面を見ることができないが、今の俺には6対12枚の翼が生えているらしい。
天使の階級では二番目とされる大天使の中で、ラファエル、ウリエル、ミカエル、ガブリエルの四大天使は熾天使として扱われている。熾天使はそれぞれ3対6枚の翼を持っているが、堕天する以前のルシファーは最上級の熾天使として6対12枚の翼があったそうだ。
ただし、これは様々な神話や古書の類が記したもので、実際はどうなのか結論は出ていない。そもそも実在しないものに対して真偽を問うのはどうなのかと、前の世界では何となく感じていた。しかし、こちらの世界では実際に邂逅したのだから、それが真実だったといえる。
そして、こちらの世界の本物いわく、ルシファーは天使でも堕天使でもなく神であり堕神なのだそうだ。
執行者だとかどうだといわれてもピンとこないのが本音だが、利用できるものは大いに活用させてもらう。
この力で、もはや腐れ縁ともなったテトリアとの関係が終焉を迎えるのであればそれにこしたことはない。
奴の存在は俺にフラストレーションを与える。
あの"歩く生殖器"を何とかしないことには、ある意味で俺の貞操と誇りが奪われかねないのだ。
人の体を奪って自らの欲望を叶えるなどさせてなるものか。
万が一、テトリアが俺に憑依した場合は、ここにいる女性たちの貞操すら危険に晒しかねない。
しかも俺の体でだ。
あまり私怨で行動することはないが、あの変態野郎に対してだけは別物である。
このあたりで奴との因縁も結末を迎えてしまうべきだろう。
一言でいえば"ぶっころ"である。




