最終章 You Only Live Twice 47
「相手を確認します。」
マルガレーテがそう伝えてくる。
「慎重にな。」
「大丈夫です。あなたを残して散りはしません。」
彼女のことだから無謀な行動はしないだろう。
ただ、一言が重い。
「頼んだ。」
何と答えるべきか少し悩んだが、それだけを返しておいた。
フェリとパティが何ともいえない表情でこちらを見ていたが、こちらも同じような表情で返しておいた。
インカムのやり取りは全員が共有しているのだ。
「私も行くわ。」
サキナからも応答があった。
「こんなときにも張り合うのですか?」
マルガレーテがすぐに反応する。
「こんなときだからこそよ。」
「そうですか。足でまといにはならないでくださいね。」
「そちらこそ。」
···頼むから仲良くしてくれ。
そしてフェリとパティはひそひそと話すのをやめて欲しい。
こうして緊張感のないままに次の行動が始まった。
「距離500m。敵影を目視しました。」
「こちらも同じよ。まだ点でしかないけど三体ね。」
マルガレーテとサキナから順次報告が入った。
詳細はわからないが、相手は浮上したままのようだ。
「大柄···いえ、あれは黒い翼···。」
「こちらも見えるわ。姿はまるで···お伽噺に出てくる天使のようね。」
黒い翼、それに姿が天使か。
それだとまるで堕天使のイメージだ。
「我々に向かって移動を始めました。」
「こちらに誘導できるか?俺も迎撃に加わる。」
マルガレーテの報告に合わせてアッシュがそう答えた。
心なしか声がはずんでいる気がする。
たぶん気のせいではないだろう。
さすがの戦闘狂だ。
「了解しました。ただ、敵意があるか感じられません。」
「そうね。可能性は低いかもしれないけど、まだ敵とは断定できないわ。」
「なら少し様子見だな。攻撃してくるとみたらすぐに迎え撃つ。」
三人のやり取りを黙って聞く。
ここは任せておく方がいいだろう。
「いい考えがあります。」
「なんだ?」
「我々ふたりであなたの頭上を通過します。そこで相手を見極めてください。」
「いいわね、それ。」
「よし、それでいこう。」
···敵かもしれない相手を引連れて、アッシュに対応させたいということだ。要はなすりつけというやつだろう。
大丈夫なのか、それ。
まあ、アッシュもやる気のようだし、お手並み拝見といくか。




