最終章 You Only Live Twice 46
ルートを変更して進んだ。
大きく迂回するが、河川を渡らなければならないのは同じである。
ただ、先ほどの橋とは異なり、仮に落とされても何とかなりそうだった。浅瀬で川幅も狭いため、最悪の場合は馬車を降りて誘導すれば渡れるようだ。
再びゆっくりとした時間が過ぎていく。
それから数時間が経過した頃、微かに水の流れるような音が聞こえてきた。
「だめだ。こちらの橋も落とされている。」
アッシュの声が外から聞こえてくる。
動きを読まれたのか、ルートとして考えられる橋をすべて落とされたのかはわからない。ただ、範囲が広いことから、人海戦術か転移による移動を可能としていることを想定すべきだった。
相手は予想以上の規模かもしれない。
「敵影は確認できそうか?」
御者台にいるファフに近づき声だけを届ける。
わずかな隙間からでも俺の姿は見せるべきではないだろう。どこから監視されているかわからないのだ。
「いや、見えないな。マルガレーテが上空から確認するためにタイミングを測っているようだが···。」
安易に飛ぶと標的にされる可能性を考えなければならない。
相手が何者かわからない以上、単独行動も避けた方がいいだろう。
俺はクリスが作ったインカムを通してマルガレーテに連絡をとった。魔法や念話よりも、こちらの方が情報を漏洩する可能性は低いと思える。
「マルガレーテ、聞こえるか?」
「はい。」
まだ見えない敵に、口の動きを読まれないよう必要最低限の言葉でやり取りすることは事前に打ち合わせてあった。
「今は単独で動かない方がいい。現在地から索敵することはできないか?」
「了解しました。結界を薄らと広げて、生体もしくは魔力の反応を探ってみます。」
「どのくらいの範囲で可能なんだ?」
「地形にもよりますが、最大で2km半径といったところでしょうか。」
すごいな。
本当に何でもできるようだ。
「負担がない程度に頼めるか?」
「問題ありません。」
俺にはマルガレーテの結界を感知することはできない。
数分ほど経過してから、マルガレーテがインカムを通して報告を行った。
「微かですが、上空から複数体の反応がありました。」
「上空?」
「正確には西に1kmほど離れた位置です。正体はわかりません。」
悪魔や魔族ならわかりそうなものだ。
しかし、正体不明と報告してきたからには別物ということだろう。




