最終章 You Only Live Twice 44
半日も経過しないうちにまた同じことが起こった。
前回と同じくマルガレーテが退けたのだか、攻撃してくるわけでもなくすぐに距離を置いているのが気にかかる。
「何だろう。目的がいまいちわからないな。」
フェリと御者を代わったファフがそう言った。
「確かにそうだな。何かの布石か、それとも単に戦力的に不足していると判断したのかは今のところわからない。」
「強襲してくるよりも厄介な気はしないか?」
「そうだな。何者かが掴めない。それに目的がはっきりとしないところが気持ち悪いな。」
テトリアならこんな曖昧なことをするとは思えない。
ただ、すぐに見つかるような間の抜けたことをビルシュがするだろうか。
それ以外にも新手がいるという可能性を考慮してみた。
監視だけしていると考えた場合、その対象は少なくないといえるだろう。しかし、使い魔を用いるというのはどうだろうか。
フェリは使い魔を用いるのは精霊魔法士である可能性が高いと言っていた。他の属性魔法士でも似たようなことはできるらしいが、そちらは概ね実在の動物を使役して使うそうだ。
人間の他にそれを得意としているのはエルフである。
ビルシュがハーフエルフだとして、他に仲間がいるのだろうか。
思考を巡らせながらも、ビルシュの背景が調査に引っかかってこなかったことが気になった。
何百年と生き、アトレイク教の教皇として長い年月を過ごしている。しかし、外部に個人的な知己がいるかどうかについては何も見いだせていない。
そもそも、教会本部の人間ですらビルシュのプライベートについてはよくわかっていないらしい。
だとすると、使い魔を用いているのはこちらが知らない者である可能性が高かった。
あくまで個人的な考えだが、第三勢力であるという考えには行き着かない。
もしそのような相手がいるのであれば、もっと前に動きを見せていたと考えた方が自然に思うのだ。
わざわざこのような真似をするというのは、単に監視をしているだけか、気を引くためにやっているかのどちらかだ。
しかし、ここで監視する意味については理解が及ばない。
「一番可能性があるのは陽動のような役目を担っているというところか。」
「別働隊がこちらを狙っているかもしれないというのか?」
「あくまで可能性があるだけだがな。」
俺が昏睡状態がどうか見極めるとしたら、あのような動きでは詳しく探ることはできないだろう。




