最終章 You Only Live Twice 43
王都まで半分くらいまでの距離に来たらしい。
らしいというのは、相変わらず箱馬車にこもりきりだからである。
時間の経過は遅く感じるが、何かがあるのではないかと警戒しているため集中力を維持するのに負担が生じた。ただ、ひとりではない分、まだマシだといえるだろう。
「何か様子がおかしいみたい。」
御者をしているファフからの伝言でフェリが伝えてきた。
「何かというのは具体的ではないな。よからぬ気配を感じるということか?」
「うん、そうみたい。今、マルガレーテさんが周囲の確認のために馬車を離れたそうよ。」
マルガレーテならすぐにどうにかされるわけではないが、少し気になった。
目を閉じて周囲の気配をうかがう。
建物や箱馬車の中というのは、気配を察知するにはいくらかの障害となる。
敵意や殺気というものは感じなかったが、近辺に生物の気配はまったくといっていいほどなかった。
この事象が漠然とした勘につながったのだろうか。
しばらく様子をうかがっていると、突然大きな魔力を感じた。
魔力というのはエネルギーが膨れ上がるときと似たような波長を示す。
俺は具体的なものを感じるとることはできないが、漠然とした力のうねりとして感知することはできた。
「何の魔力だ?」
「これは···たぶん、マルガレーテさんの魔力よ。」
「何かと交戦しているということか?」
「少し待ってくれる?」
フェリはそう言って目を閉じた。
魔力の性質を読もうとしているのだろう。
「···ううん、感じるのはマルガレーテさんの魔力だけよ。敵対する者の魔力は感じられない。」
何だろうか。
魔力ではなく、霊力や神力の使い手と接敵した可能性があった。
ただ、そういった力だと俺にもある程度は感知できるはずだ。
「マルガレーテさんの魔力が急激におさまっていくわ。」
しばらくして、ファフを通じてフェリが状況を伝達してくれた。
「何かが遠方からこちらを監視していたみたい。数が多くて広範囲にいたから、マルガレーテさんが全方位に向けて攻撃を放って退けたみたいよ。」
···それは大丈夫なのだろうか。
相手が王城からの勅命や依頼を受けた騎士や冒険者だったりしないよな?
「相手が何者かはわかったのか?」
「はっきりとはしないみたいだけど、使い魔か何かじゃないかって言ってたわ。」
「使い魔?」
「存在としては妖精や精霊と似たような感じのものかな。」
「魔物を使役したものではないのか?」
「うん。いろいろだけど、魔力で作られた感情を持たない霊体や魔物といえば近いかも。」
そんなものもいるとは知らなかった。
しかし、それを操っていたのは何者なのだろうか。




