最終章 You Only Live Twice 41
その日のうちに王都へ向けて出発した。
今回は精霊馬車ではなく、一般的な馬車を使用する。
ともに行動する人数が多いため二台の馬車に分乗して移動するのだが、それだと精霊魔法士の数が足りない···というのが建前だ。
本当は王都に到着するまでの時間稼ぎをすることが目的である。
自分を囮として敵を引き寄せるか、時間を稼いでいる間にビルシュが何らかの動きを見せることを期待していた。
昏睡状態だと偽っているため、俺は担架に乗せられた上に全身を布でおおわれて馬車に運び込まれている。
この街で敵対する勢力がいるとは思えないが、万一に備えての配慮はしておく方がいいと判断した。
大型の箱馬車であるため、一度乗ってしまえば籠っている限り問題はないだろう。
強いていえば道中暇なことくらいだが、そこは我慢するだけである。
この機会に銃器や刃物の手入れをじっくりと行う。
今後の予測を頭の中で浮かべようとするが、なかなか具体的なものは出てこなかった。
ふと思う。
昏睡状態で王都まで行くなら、排泄物は垂れ流しという設定か···。
いや、現実問題として、そもそもがそれ事態も周囲をうかがいながら行く必要がある。
思えば、ある人物を狙撃する場合も似たような感じだった。
ターゲットを補足し、スコープでとらえるまでの時間は、同じところでまるで岩のように身動きもせずに留まる。
あれを何度か経験すると、職業的スナイパーにはどうもなれそうにないと思ったものだ。
大人用のオムツを用いて静かに待ち、やがてターゲットを撃ち抜く。
現実の狙撃手とはそういったものである。
クールなタフガイを描いたスナイパー小説や漫画はあるが、あの主人公もきっと同じようにオムツを着用していたに違いない。
なぜだか少し親近感を持ちながら、現実とは厳しいものだとため息を吐く。
軍隊などでスナイパーという役目を担う者にはオムツが支給されることもあるそうだが、これはギャグではなく事実なのだ。
戦場では、時に人は人間性を大きく変える。
それはそういった様々な非現実的な事象を受け入れるからに他ならない。
そして、気づかいを忘れておもしろおかしく「このク○まみれのスナイパーが!」などという言葉を使った者は、後ろから味方の弾丸に撃ち抜かれて逝くのである。
「人間同士の戦いなんてものは、いつでもロクデモナイものに違いない。」
ふとつぶやいた俺に、近くにいたフェリとパティが目を丸くして見ていた。




