最終章 You Only Live Twice 38
わーわーギャーギャーと騒いでいるのを見ていると、やはり副作用のことは話せなかった。
それで躊躇されて昏睡状態継続なんて事態は避けたいからである。
「そういえば、タイガ様は先ほど副作用がどうとか言われていましたよね?」
あ···マルガレーテがピンポイントで思い出したようだ。
「ちょっとしたものだけどな。」
平静を装ってそう言った。
じーっと見られているのに気づいていたが、ここはあえて別のことを考えているフリに徹する。
「…その副作用についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」
追求の手は止められなかった。
仕方がない。
正直に話すしかないか。
そう思ったときに、これまで何も発言しなかったリルが救いの声を放った。
「それはタイガには影響ないものなの?」
「ああ、昏睡状態を解除するときに効果は相殺されるそうだ。」
「そう。だったらいい物があるわよ。少し待っていてくれる?」
いい物って何だろうか。
とりあえず、こんなに混沌とするなら口移しでない方法にかけたい。いや、すがりたい。
一度部屋を出て行ったリルがすぐに戻って来た。
「これよ。」
テーブルに置かれた物を見ると、薄い小さなモナカの様なものだった。
「あ、これ使ったことある。」
パティが懐かしそうにもらす。
「パティは小さいときに粉薬が苦手だったから、よく使っていたわよね。」
「うん、ビブラートだっけ?」
「オブラートよ。」
パティの天然が炸裂したが今はスルーしておこう。
じっくりと見ても元の世界では見たことがない物だったが、確か昔のビブラート···いや、オブラートはこんな感じだったと聞いたことがあった。
「これに粉薬を入れて軽く水に浸してから飲むのよ。それほど使うことはないんだけど、冒険者の中には粉薬が苦手な人もいるから常備してあるの。腹痛や生理痛のときの粉薬は治療院でもらえるのだけど、飲めない人は服用した瞬間に咳き込んだり嘔吐いたりするから。」
回復魔法は病気などには効果がない。
治療院ではちょっとした薬を購入できるので、常備薬としてスレイヤーギルドには置いてあった。
「なるほどな。助かるよ。」
これで万事解決だ。
「「「「·······················。」」」」
なぜだか沈黙がその場を支配するが、これで不安は解消された。




