最終章 You Only Live Twice 36
スレイヤーギルドに戻り、今後のことについて再度話を詰めておいた。
アッシュには大公への連絡をお願いし、その返答について待ちの状態となる。
「意識を失ったまま王城に搬送されたらどうするの?」
フェリが心配しているのは、昏睡状態を解除する薬をどうやって飲ませるかということだろう。
「その場合は、俺かガイウスが侵入して投薬するのがいいだろうな。」
確かにふたりなら王城にも入りやすいのかもしれない。
いや···それはそれでどうなんだろうか。
もし口移しで薬を飲まされるとしたら、野郎にそれをされるということではないのか。
しかも、相手も媚薬効果で変な欲望を持ったりは···いやいや、それはないだろう。
いくら媚薬でも同性に向けて変な感情を持たないのは、アッシュとガイウスを見ていればわかる。彼らはノーマルだ···のはずだ。よく知らんけど。
だがそれはそれで他の女性、例えばメイドなんかに襲いかかったりはしないだろうな?
アッシュは既婚者だし、何よりそれがバレたら嫁にバラバラにされるような気がする。むしろ、嫁が怖くて理性は保てるか?
ガイウスは···わからん。
誰かを押し倒し、既成事実ありとしてゴールまで行く気がする。
大公は事実をもみ消さずに「ちゃんと責任をとれ」とか言いそうだしな。
···薬の副作用を説明しておくべきか。
だがそれでどうなる?
「··························。」
嫌な思考をしていると、サキナが寄って来た。
「タイガ、顔色が悪いけどどうかした?なんか薄らと汗ばんでいる気がするし。」
そりゃ顔色が悪くもなる。
アッシュやガイウスに口移しされる可能性、アッシュが嫁に解体される悲劇、ガイウスは···まあ、どうでもいいが、とりあえずよからぬ事を考えてしまう。
「本当に大丈夫?」
フェリまで俺を覗きこんできた。
言えない。
薬の副作用について話せば、誰も昏睡状態から解除してくれないかもしれないのだ。
ふとマルガレーテと目が合った。
先ほどから俺を見ていたのか、何かを見透かすような目をしている。
ああ、彼女なら副作用のことを話しても大丈夫な気がする。別の意味で身の危険を感じてしまうが。
「タイガ様、何か隠しておられますね?」
···こういったときの洞察力の高さは何だろうか。
俺はまだ見ぬアッシュの嫁とマルガレーテが重なって見えてしまうのだった。




