最終章 You Only Live Twice 30
ビルシュの演説は国々の考えを二極化させた。
アトレイク教の信者が多い国の一部では、俺を敵視して討伐を謀ろうとする動きを見せるところも出てきている。
また、スレイヤーギルドそのものを危険視する意見も少なからず出てきており、俺を中心として渦中に放り込まれた状態だ。
アトレイク教会本部の見解としては、無事な姿を見せたビルシュに喜びを見せる幹部もいる反面、「なぜこちらに戻って来ないのか?」という疑念も渦巻いていた。
状況証拠だけでいえば俺にアリバイなどなく、むしろ「事件当日になぜ教会本部に急行できる位置にいたのか」ということを疑問視されている。
ただ、俺をよく知る教会の聖職者たちは、今のビルシュが本物かどうか見分けがつかないという部分を論点としていた。
「天剣様が邪神シュテインの手先だとすると、これまでの人々に対する貢献はどう説明するのか?」
「しかし、いつも絶妙なタイミングで現れたのはそういうことではないのか。」
などという異なる主張で結論を出せずにいる。
そんな状況において、俺は身を隠しもせずに堂々とスレイヤーギルドで動向をうかがっていた。
ここで慌てたところで何も変わらない。
むしろ、姿を隠した方が疑いが深くなってしまうのは明白だった。
「焦っているのかな?」
傍にいたフェリが誰ともなしにそうつぶやいた。
「抜け目のないビルシュがそれで浅はかな行動をするようには思えないが···目的がわからん。」
答えたアッシュの言う通り、一連の動きに対する目的が見いだせなかった。
混乱を生じさせるには、いい出方なのかもしれない。
仮想敵の印象を強め、混乱を招いたとするならそこそこの効果はあるだろう。
ただ、それは俺が姿を消していた場合の話である。
ここにいるぞとこちらも存在を誇示しているため、状況が混沌としていた。
テトリアとビルシュの関連性に対する証拠はない。しかし、俺の方が教会本部と近い距離にいる。
何を狙っているのかはっきりとしない限りは、こちらからビルシュに近づくのはリスクが大きかった。
この停滞は何かの時間稼ぎなのだろうか。
それとも他に明確な目的があってのことなのか結論は出なかった。
そうしているうちに数日が経過し、また新たな衝撃が走ることになる。
ビルシュが再び襲撃されて、多くの人々の前で惨殺されたのだ。




