最終章 You Only Live Twice 28
翌朝、クレアのところに出向いてビルシュの遺体消失の件を伝えた。
彼女は昨日に引き続きショックを受けていたが、他言無用としてルシファーのことを話すと驚き、束の間だが様々な考えを巡らせたようだ。
そして何かを決断したかのような強い瞳で俺をじっと見た。
「私がどんなに考えを巡らせようとも、何かが良い方向に向かうわけではありません。タイガさんを信じて自分にできることをしっかりとやります。」
本当に強い娘だと思った。
見た目や年齢以上に、そしてそこらにいる大人よりも自分の気持ちを整理できている。
俺にできることは、クレアの思いを無下にしないことくらいだろう。
「俺が考えていることが確実なものだとは言い切れない。ただ、傷つく人がこれ以上出ないよう尽力する。」
俺に言えることはこれだけだった。
何の確実性も無い言葉だと理解している。しかし、クレアは俺のことを信じているのだ。これ以上、この清廉な聖女が悲しまないように取り組むしかないだろう。
少し無理に笑顔を浮かべたクレアの頭を軽く撫で、俺はそこを立ち去った。
スレイヤーギルドへと戻り、クレアに話した内容を復唱するようにみんなに伝える。
話を聞いていた者たちも驚きを表情に浮かべていたが、俺も含めて考えていることは同じだった。
手がかりがなくなった。
またもや動きを制限されることとなったのだ。
いや、これはもしかすると意図的なものなのかもしれない。
ビルシュが敵だと想定すると、ルシファーが現れ自分に疑いが持たれたと感じたことで、このような行動に出たのかもしれない。
命を絶たれたことはどう説明するのか?
テトリアの気配は感じず、わずかな時間でビルシュを亡き者とできるのはそれほどいるわけじゃない。
狂言による仮死状態を演じたと考えれば辻褄は合わないか。
遺体消失の件についてはどうか?
自ら仮死状態に陥っていたなら、転移などによる方法で姿を消すことは可能だ。 あの靄や視界を遮った閃光のようなものは、テトリアの関与に含みをもたせた演出ではないだろうか。
では、手っ取り早く教会本部をテトリアに襲わせるようにしなかったのはなぜか?
そうすることでは何の解決も計れない。
まずビルシュへの疑いか払拭されるわけではないことから、その後も監視の目は続くだろう。それに、テトリアが精神体であることも関連があるのではないかと思えた。




