最終章 You Only Live Twice 19
「どうしたんだい?君が連日来るなんて珍しいね。」
翌日、再びビルシュを訪れた。
「少し顔を見たくなった。」
「···そういう趣味はないんだけどねぇ。」
「そういう趣味の奴を紹介してやろうと思ってな。」
「···相変わらずだね。」
「そっちもな。」
いつもと変わらないビルシュを見て、先入観を持たずに接することにした。
「で、本題は何かな?」
「ここに戻って来るまでに通過した国であった、遺跡に向かった調査団が失踪した事件のことだ。」
「ああ、聞いているよ。」
「その後どうなったかはわからないが、あの付近を通っていておかしなことがあった。」
ありのままは話さない。
どこまで知っているかは知らないが、本題と関係ないことには触れない方がいいだろう。
「おかしなことって?」
「突然真っ白な空間に引き込まれた。」
「···それで?」
「ルシファーと邂逅した。」
「···ふふん、それは何かの冗談かい?」
ビルシュの表情は変わらない。
ただ、目の奥に鋭い光が宿ったように感じた。
数千年の時を生きた古代エルフとて感情をあらわにするものらしい。それだけルシファーという固有名詞のインパクトが強いのだろう。
「冗談ではない。ただ、あれが現実だったかどうかはいまだにわからない。」
「妄想じゃないのか?」
「妄想は自らの願望をイメージするものだろう?俺にそんなものはない。」
「仮にそれが現実だったとしよう。そのルシファーは何と言ってきたんだい?」
「いろいろと言っていた。神アトレイクはずっと神界にいるだとか、俺はテトリアの片割れじゃないとかな。」
ビルシュは動揺こそ見せていないが無表情になっていた。
こういった様子を見ると、仮にルシファーが言っていたことが真実だとして、ビルシュは何でも見通せているわけではないようだ。
それとも、神という存在は互いに干渉できないものかもしれない。
「君はそれを信じるというのかい?」
「さあな。正直わからない。ルシファーがいうには、神アトレイクは俺の味方というわけじゃないらしい。今更だがな。」
「本当に今更だね。アトレイク様は君をこれまで助けて来ただろう?その事実を覆すにはルシファーは危険過ぎる。」
「ルシファーがなぜ危険なんだ?これまでに絡んできたわけではないだろう。」
そこでビルシュは少し考える素振りをした。




