152話 レイド vs上位魔族⑧
アッシュは他のスレイヤー達にオーガの大群の外側から戦力を削ぐように指示を出した。
集団の中に踏み込むのはリスクが高い。
一撃で致命傷を与えることができないかもしれない、ということだけではない。密集した中で囲まれ、逃げ場をなくすことだけは避けておきたかった。それだけオーガは耐久性が高いのだ。
パーティーごとに5組に別れて、オーガの大群を囲むような布陣を組む。
ヒット&アウェイで相手を翻弄し、少しずつ戦力を削いでいく。
後衛の魔法士が魔法を放ち、直撃した間隙を狙って前衛が物理攻撃を仕掛ける。
熟練のコンビネーションを見せるスレイヤー達はオーガの数を一体、また一体と減らしていった。
アッシュは単独で剣撃を繰り出し、オーガを両断していった。
首や間接を狙い、時には皮膚の弱い目や口に刺突を入れていく。
オーガの指揮官は取り囲んで攻撃をするように指示を出したが、その素振りを確認したアッシュが集団に踏み込み、指揮官の首を跳ねた。
阿鼻叫喚が周囲を覆う状況の中、アッシュは冷静に無理のない攻撃を行う。
集団からの離脱の際には炎撃を放ち、後続を断ち切った。
一度間合いを長く取り、仲間の状態を確認したアッシュはオーガに押されぎみなパーティーの救援に向かう。戦況を見極めるとまた離脱して他の場所へと移り、攻撃を続けていく。
やがて、オーガはその数を10名足らずに減らし、戦意を喪失させていった。見るからに動きが鈍った敵にスレイヤー達は容赦のない攻撃を入れ、ついには殲滅を成功させた。
「ほう。思ったよりも早かったな。」
オーガを殲滅に追いやったアッシュ達は、再び魔族が地に降り立ったことに気がついた。
手には剣を持ち、半身に構えている。
「第二ラウンドの開始か?」
アッシュは1人で前に出て剣を構える。
「個々の力はそれほどでもないが、集団での力は脅威となると考えるべきだろう。ここで叩いておくか。」
独り言のように話す魔族は顔を上げ、山の方を見上げた。
「···ギルマス···他にも魔族が···。」
ステファニーが魔族の視線を追うと、山の上空から4体の別の魔族がこちらに迫っていた。
アッシュは目の前の魔族から目を離さない。
「こっちに向かっている魔族はお前と同格か?」
「ふん、奴等は使い魔程度の下級魔族だ。我と同じにするでない。」
スレイヤー全員に衝撃が走った。
これまでに対峙していた魔族が下級魔族という事実。
「お前と同格の魔族はどのくらいいる?」
「···正確には知らん。興味がないのでな。上位魔族は20人に満たないと言っておこうか。」
魔族は不敵に笑った。
スレイヤー達の絶望的な表情を見て楽しかったからだ。
下級魔族ですらランクAクラスのスレイヤーが数人がかりでようやく倒せるかどうかなのだ。上位魔族ともなれば、どのくらいの戦力で挑まなければならないのか。
「もう一つ教えておいてやろう。下級魔族が5人がかりでも我は倒せない。貴様らはここから生きては帰れん。」




