最終章 You Only Live Twice 16
クリスはあくまでクリスだった。
「教皇ビルシュの狙いは何だと思う?」
このどうしようもなく現実主義な科学者に、興味本位で聞いてみた。
「簡単なことだ。教会の真価を向上させたいのだろう。そのために神でも英雄でも利用する。その中に君が割って入ったから、それをも利用しようとしているだけだ。難しく考える必要などないだろう。」
シンプルな答えだった。
だが、そういったことの方がわかりやすい。
神だの悪魔などが絡んでいるからややこしいのだ。
クリスが言うように元の世界の案件に置き換えてしまえば、ある大教団が自らの権威を高める目的でテロ行為を行っていると考えればいい。
その中に人外が出てこようとも本質はひとつなのだ。
あとは確証を得て被害が出ないように配慮することである。
印象や意識を操作されているというのは一種のマインドコントロールだ。
それがどこまで事実に根ざしているかは最終的に俺が判断するしかないだろう。
「クリスはマインドコントロールをどう思う?」
さらに興味本位で聞いてみた。
彼は脳科学に明るい。
世間一般の常識とは違う答えが出るかもしれないのだ。
「あれはひとつの技術だ。」
「技術か。確かにそうだな。」
エージェントとして似たような技術は度々使った。
成功率については相手や状況によりけりだが、強制的な手法でないだけに、型にはまると任務の遂行上でかなりやりやすさを感じる。
「君らも似たようなことをしてきただろう。ターゲットの身内を篭絡して情報を吐露させるのも広義では同じだといえる。それに、メディアなどを使って有力者を心理的に追い詰めることも同様だ。」
扇動は群衆心理を操作して大衆の感情を煽る。
著名人や政治家などにはこの手法が効果的だった。
一方、マインドコントロールはもともとポジティブシンキングや潜在能力を導き出すためにつくられた技法である。
俺たちホルダーの能力を開花させるときにも用いられていたようだ。
一般的な教育機関でも使われる認知行動原理と根本は同じで、自身の心理に働きかけるものをセルフコントロールという。
対して、マインドコントロールは他者を誘導するものである。セルフコントロールと比べると負の面が強いといえるだろう。
「神的な存在が行う心理操作もマインドコントロールだと思うか?」
「···ふむ。シンプルにまとめれば同じだろう。」




