最終章 You Only Live Twice 9
まだ体調が万全でない兵士や研究者たちを残し、俺たちは先に王都に戻ることにした。
あの遺跡に関しては、結界をすべて破ったことにより異変が生じることはないと判断したのだ。
万一に備えて、残った者たちには現場より少し離れたところで休息を取るように話してある。
地面にあいた開口部は魔物の棲息地となる可能性も考慮し、いずれ塞ぐよう進言するつもりだった。
「おお、よくぞご無事で。」
王都に戻ったあと、国王に謁見を求めて現地の状況を報告する。
「兵士や研究者たちは全員が無事でした。彼らが消息を絶ったのは、遺跡内の結界を解除する際に発動したトラップによるものです。今はすべての結界を解除しましたので、同様のことは起きないだろうと思われます。ただ、彼らはかなり消耗しているため、できるだけ早い段階での救助が必要でしょう。」
「うむ、感謝する天剣様。それで、あの遺跡の最奥までは行かれたのですな。」
「ええ。」
「何があったのか教えてもらえますかな?」
「陛下はご存知だったのではないでしょうか。あれは、かつて複数の悪魔王を従えた魔王の居住する場所だったと。残念ながら、今は何も残っておりませんが。」
この国王からは目立った悪意や邪気を感じることはなかった。ソート・ジャッジメントの反応を考えると、為政者にありがちな野心などは秘めているのだろうが特筆すべきものではない。
「···うむ、知っていた。当初は何の遺跡かはわからず、遺物が国の財源になるのではないかと思っていたのだが、教皇様から教会に秘匿されている文献のことを聞いて方針を変えたのだ。」
「方針とは?」
「教皇様より聞いておるのであろう?」
やはりビルシュからの働きかけがあったようだ。
「念の為、内容に相違がないか、すり合わせを行えればと思っています。」
「魔王が残した宝珠を所有することで、巨大な富と力を得るということだ。」
国王の話す内容が虚偽でなければ、彼もまた教皇ビルシュに踊らされたひとりということになる。
「そのような宝珠はありませんでした。過去に破壊されていたようです。」
「まさか···誰がそのような真似を!?」
「あの宝珠は陛下のおっしゃるような都合のいいものではありません。破壊された今も、結界に連動して人の魔力を吸い上げようとしていましたから。」
「魔力を吸い上げ···それは何のためにだ?」
演技でなければ本当に知らなかったということだろう。
「宝珠が残っていれば、それが魔力を吸い上げて魔王を復活させるためですよ。」




