最終章 You Only Live Twice 4
『人間の中にも限りなく神に近い力を持つ者がいる。例えば、数千年の時を生きた者とかな。しかも神族とも呼ばれている種族の血統だ。』
神族とも呼ばれている種族というのは少ない。
しかも、神話の域にいて実在するかもわからないものだ。
以前に王立図書館で目を通した文献の片隅に書かれていた記述を思い出す。
「古代エルフか。」
神族と呼ばれる種族はアークヴァンパイアとエンシェントドラゴン、そして古代エルフだ。
そのすべてが不死に近い寿命と優れた知能を持つという。
『思い至ったか。』
俺の周囲にいる人物。
そして意識操作を可能とし、アトレイクやテトリアとも接点を持つ者というのはひとりしかいない。
「アトレイク教の教皇ビルシュか···。」
彼ならば、テトリアの鎧を通して俺に神アトレイクを印象づけることは可能だ。
そして、天剣爵位の叙爵式にテトリアを呼び寄せることも。
「ただ、疑問がある。俺に授けた神威術はビルシュの力によるものだというのか?いくら古代エルフでも、それほどの力を持っているとは思えないが。」
『聖脈を解放できる力を持つ者にとって、覚醒させることはそれほど難しいことではない。』
「覚醒?」
『そうだ。おまえがいう神威術は、元よりその体に備わった能力だからな。それを開花させるために、奴はおまえの記憶の断片をこじ開けたにすぎん。』
「俺はただの人間だ。そんな能力を持っているはずが···。」
『それも意識操作···いや、記憶の改竄というべきだろうな。おまえ自身の意識ではなく、その身に流れる血が記録している力だ。元より異能というべき力を持っていただろう。』
ソート・ジャッジメントのことをいっているのだろう。しかし、それと転移では力の質が異なる。
「俺を何だと思っているんだ?」
『おまえもまた、神族の血を受け継いでいる。』
「····················。」
言葉が出なかった。
確かに神族ならばそういった力を持っているのかもしれない。しかし、俺はテトリアから派生した存在だと聞いている。ならば、テトリアが神族だということではないのか。
『それも意識操作の弊害だな。おまえはテトリアの片割れではない。』
「···マジか。」
『テトリアは古代エルフの血を引いている。とはいっても、教皇ビルシュの子という訳ではない。自らの血と古代の悪魔王を融合させて人格を与えたのだ。英雄としての名声を得た時代は、この世に生を受けたばかりで内面は赤子同然だっただろう。今も古代エルフとは主従に近い間柄だ。』




