第4章 朋友 「relic⑯」
壁画のある位置から少し進んだ所に、天井まで届くほどの巨大な扉があった。
前の世界でも見ることがなかったほどの存在感を持ち、何を目的としてこの大きさの扉を作ったか想像もできない代物である。
「物々しいな。」
ファフがつぶやいた一言に共感する。
このスケールの扉となると、人が開くのは物理的に無理だろう。人外たる何かがくぐり抜ける扉としか思えなかった。
「結界の次は開き方のわからない扉か。様相は異なるが、これも結界ということだろうな。」
アッシュの言うように、何らかの方法で解除しなければ開かないと思えた。
「魔力は感じるのか?」
「いや、不思議なことに感じられない。」
まさか、本当に力押しで開けろとでもいうつもりなのだろうか。
試しに軽く触れてみる。
「!?」
扉に触れた瞬間、一瞬意識を吸い込まれるような感覚がした。
「どうした?」
「魔力ではなく、霊力だな。俺の力に反応した。」
グルルが持つのは霊力だ。
「何も反応しないぞ。」
アッシュやファフが同じように触れてみるが、何も感じないようだ。
「壁画があった所から少し様子がおかしかったが、タイガの力にしか反応しないということはそういうことなのかもしれないな。」
ファフが言っているのは、この遺跡が俺という存在を特定して呼応しているという意味だろう。
俺個人というよりも、グルルの後継者として何か関わりがあるということだ。
それが力を貸してくれるものなのか、もしくは害をなすものかはわからない。
しかし、前に進むしかないと思えた。
そのときに少し離れたところにまた奴がいるのが見えた。
壁画のところにいたのと同じ存在だ。
具体的な容姿はぼやけてわからない。
ただ、亡霊や死霊の類でないことはなぜだが理解できた。
頭に思念のようなものが流れ込んでくる。
『そこは純然たる霊力を持つ者しか通り抜けることはできない。』
「それが俺ということか。」
『そうだ。』
「何者だ?」
『中に入ればわかる。』
罠という気はしなかった。
ただ、誘導されている。
この先に何があるかはわからないが行くしかないだろう。
「どうやら俺が呼ばれているようだ。」
アッシュとファフにそう言って、俺は再び扉に触れる。
「大丈夫なのか?」
「たぶんな。」
アッシュの言葉に俺はそう返した。




