第4章 朋友 「relic⑨」
壁からの射出物に反応して後方へと跳んだ。
通路内はヒカリゴケか何かの影響でほんのりと明るく、そのわずかな光を反射させるものが視界に入った。
弓矢か何かが放たれる罠かと思ったが、目に見えるそれはもっと大きな物体である。
アッシュとファフがともに蒼と紅の炎を撃ち出し応戦した。
炎に包まれた銀色の二体は、動きを止めずにこちらへと向かってくる。
俺はHG-01を両手に顕現させ、それぞれの頭部へと弾丸を撃ちこんだ。
着弾の衝撃で上体をそらせた相手だが、しばらくして元の姿勢へと戻り、こちらへと腕を振り上げてくる。
跳ね上がった肘の部分に再び銃撃を浴びせた。
先ほどと同じように着弾時に体を仰け反らせるが、やはりすぐに体勢を立て直そうとする。目の前の個体の間隙をついて、足首付近に銃弾を集中させた。
50口径弾の連射による破壊力は、相手の強度を上回り足首を粉砕させる。被弾した敵はそのまま体勢を崩して地面へと倒れ込んだ。
後頭部に魔石を見つけた俺は、そこに向かって引き金をしぼる。
もう一体の方へ視線をやると、アッシュの剣戟が同じように魔石を破壊しているところだった。
「ゴーレムだな。」
ファフがつぶやいたように、敵は二体のゴーレムでその体躯は銀色に輝いていた。
「悪質な罠だな。」
アッシュがそう言う。
ゴーレムの検証はあとにして、二体が現れた壁面を調べてみる。
特に開口部などは見当たらない。
転移ゲートだろうか。特別な仕掛けなどは見つからなかった。
「このゴーレムはミスリル製だな。後頭部の魔石が動力と命令系統を兼ねているように見える。」
ファフが検証した通りだろう。
「その命令が遠隔でなされたものか、もとからそう動くように記憶されていたものかはわからないか?」
「そこまではわからない。ただ、この二体が出現したときに他の魔力が動いた感覚はなかった。」
「結界に連動したトラップということだな。」
それなりに強力なゴーレムだった。
ふたりの魔法が直撃しても動じず、強度も相当なものである。
「今のが最後の結界ならいいんだがな。」
先に進むほど厄介なトラップが発動するようになっている。
地上にいる人間を引きずりこみ、侵入者の魔力を奪う。極めつけはガーディアンのごとく現れた強力な二体のゴーレムの強襲だ。
「この先に何があるのかますます興味がわくな。」
アッシュがうんざりしたような顔でそう言った。
強敵と戦うのはおもしろいのだろうが、こういった罠や先の見えないダンジョンアタックのような状況はお好みではないらしい。




