第4章 朋友 「relic⑧」
さて、意識を奪って運んだ研究者たちを兵士へと引渡し、地上へと脱出するためのロープを用意した。
ロープで上へと登れる者ばかりではないようだったので、布地や板を使った救護用の簡易担架も急造しておく。
すぐに脱出するには消耗が激しいようだったため、彼らにはしばらく時間を置いてから行動するように告げて結界の元へと戻った。
複層で形成されているという結界は、俺が触れた途端に消滅する。
やはり魔力や魔法で形成されたものは、俺の手に触れると意味をなさなくなるようだ。
「これで話の通りだとすると、4つ目の結界が解除されたことになる。」
「そうだな。しかし、結界の解除が竜巻の原因なら、今回も···。」
そこまで話したときに、離れた所からゴゴゴという音が鳴り響いた。
1分程度でおさまったが、やはりファフの言う通り関連性があったようだ。
すぐに引き返して兵士や研究者たちの様子を確認する。
全員がまだその場におり、意識のある者は不安げに頭上を見上げていた。
「何があった?」
先ほどの兵士を見つけてたずねてみる。
「わからかいが、地上の方から大きな音がした。」
「ここにいる者に異常は?」
「ない···と思うが。」
周囲を見渡すが、特に気になる点はなかった。
「やはり何かの引き金になったようだが、実害はなさそうだ。」
ファフの言う通りだった。
地上はわからないが、今いる空間では何も起きていない。
「もう一度戻って、先へ進もう。」
俺はそう言って、アッシュとファフとともに行動を再開した。
結界を解除したところを通過して先へと進む。
「まだ結界は続くと思うか?」
「さあな、情報がないから予測もできない。」
そんな会話を交わしながらしばらく進んでいくと、アッシュが手で制止するようなゼスチャーをした。
「また結界だ。」
「今度は先ほどのとは少し違うようだな。」
アッシュとファフがそういうが、俺にはその違いはわからなかった。
「このまま進んで解除しても大丈夫そうか?」
「どうだろうな。性質は違うようだが、どういったものかまではわからない。」
「まあ、タイガが進むより他に選択肢はないがな。」
ファフは真面目に、アッシュはニヤニヤ笑いながらそう返答した。
こういった場面で性格が出るものだなと思いながら足を進める。
数歩で結界を解除する感覚をえたが、その瞬間に両側の壁から何かが射出された。




