第4章 朋友 「relic⑥」
「···やはりそうか。」
先へ進むとアッシュが何かに気づいたようだ。
「どうかしたのか?」
「ああ、少し止まるぞ。」
考え込むような素振りで立ち止まり、目を閉じて何かを確かめているようだ。
「···たぶん、魔力が抜かれている。」
「魔力が?」
「それほど強烈ではないが、少し前から体内の魔力が少し乱れていた。地場の影響か何かだろうと思っていたが、どうもそうではないようだ。」
俺にはわかりにくい表現だが、何かに魔力が吸収されている気配があるということだろう。地場の影響というのは、自然に漂っている魔力と体内の魔力が干渉して不安定になることのようだ。
今のアッシュの言葉だと、人為的に他者の魔力を奪おうとしているものがいるという意味合いだと考えられた。
「なるほどな。この事象が兵士よりも研究者たちが消耗していた理由か。」
つぶやくように言うアッシュだったが、俺には理解しにくい内容だ。
「具体的には?」
「ああ、悪い。わかりにくかったな。魔力というものは、自然界にも固有の存在にも備わっているのがこの世界の理なんだ。自然界に存在するものの中には、他から魔力を吸収しようとするものがいる。特異な植物や鉱物などがそれだ。人間だったら保有する魔力量の強弱で、その影響の度合いが変わる。」
「今はその自然界からの影響ではないということか。」
「そうだな。この遺跡を形成する鉱物や素材の影響かと思ったが、魔力の流れを探ってみると奥の方へと流れている。それと、魔力を集めようとしているものの正体はわからないが、その集束位置が人の目線の高さにあり、建造物などの類ではないとわかった。まあ、それが生物かどうかまではわからないがな。」
「それが微弱な魔力を吸収しているから、魔力量の影響で研究者と兵士の消耗に違いがあるということでいいのか。」
「ああ、その解釈で間違ってはいないはずだ。兵士は総体的に魔力量が少ないから消耗しやすい。研究者は長時間に渡って探索を進めていたから、魔力量の少ない順に消耗していったのだろう。今も探索を続けている奴らは、もともとの魔力量が多いのだと思う。」
この事象に気づいたから、研究者たちは総出で探索を進めたのか?
それだけが原因とも思えないが、もしかすると次に続く結界の解除に難航したためというのもあるのかもしれなかった。




