14話 異世界で就職?
「ねぇ、タイガのそのボサボサの髪は普段からなの?」
リルの質問に、思わず頭に手をやった。
「あ・・・。」
爆発に巻き込まれた影響で、所々がチリチリになっている。
その事を伝えると、「じゃあ、お風呂に入ってから、髪を整えてもらった方が良いわね。煤が頬についてるし、せっかくのイケメンが台無しよ。」と、ウィンクしながらそんなことを言われた。
近くでフェリがまたプクッと頬を膨らませている。
何かと機嫌が悪いようだ。
俺は街に向かうため、アッシュたちと山を下っていた。
現実的な問題として、生きる糧がいる。
俺はこの世界では、金もなければ一般的な生活の知識すら持ち合わせていないのだ。
そんなことを考えていると、アッシュが話しかけてきた。
「タイガは魔族の存在を遠くから察知していたよな?あれはどういった能力なんだ?」
ソート・ジャッジメントの能力は相手の善悪属性を見定めるものだ。
この能力に関しては詳しい内容を人に話すのを控えている。
特性上、相手がこちらに対して身構えてしまう可能性が高いからだ。たとえ後ろめたいものがなくとも、内面を覗かれるような気分にさせてしまう。
俺はこの能力については、こう説明することにした。
「気配や殺気を察知する能力に似ているかな。昔から悪意や邪気に対して敏感なんだ。」
「あの距離から魔族の存在が察知できるのは、かなりの精度といえるな。おかげでフェリも無事だったし。なぁ、スレイヤーをやるつもりはないか?」
聖属性の魔法士が産休で欠員と言っていたな。確かに魔族を察知できるかどうかは、職務上の生命線と言えるだろう。
「俺で良いのか?魔法は使えないぞ。」
願ってもない申し出かもしれない。街に行っても、すぐに稼げる方法がみつかるとは限らないのだ。
何をするにしろ、金は必要となる。
「お前なら大歓迎だ。」
そんなアッシュとの会話を聞いていたフェリやリルは嬉しそうな表情をしている。
一方、ラルフは舌打ちしやがった。
この野郎。