第4章 朋友 「relic④」
「ここに連れ込まれたと言うべきかわからないが、我々が竜巻に巻き込まれたときに、研究者たちは全員が調査に出払っていた。」
調査を全員でとなると少し異例な気がした。
現場で必要なものが出た場合や不慮の事態に備えて、何名かは拠点に残っていそうなものである。
それが総出でとなると、その時点で何か発見があったのだろうか。
「その時に何か特別な動きはなかったのか?」
「どうだろうか。我々には調査のことはわからない。もともとは3チームに別れて調査を行っていた。報告書や記録を行う者と休息を取る者、それに調査を実施する者といった感じだ。それが総出となったことが特別といえば特別かもしれない。そういった状況は初日以来のことだったからな。」
結界に関するものか新しい発見によるものかはわからないが、そのときにそれまでとは違う動きがあったということだ。
「研究者はここまでどうやっておりたんだ?」
「縄ばしごと命綱を使っていた。竜巻で破損してもうないが···。」
「ここには警護の者はいたのか?」
「ああ。5名が同行していた。彼らも負傷などしていないが、なぜだか消耗が激しくて今も寝ている。」
詳しい話を聞いても特別な情報は出てこなかった。
唯一、竜巻が起こったときに何かがあった可能性があるといったところだ。その何かが要因だろうが、奥にいる研究者たちから話を聞かなければ、今のところは詳細はわからないままだ。
「タイガ、少しいいか?」
他の者たちの様子を見ていたアッシュとファフが戻ってきた。
地上から食料を運んで来たのでそれの分配も済ませている。
「何かあったのか?」
「魔力が体内で不安定になっている者が多い。特に状態の悪い者ほどその兆候にある。」
「ひどいのか?」
「体内の魔力が不安定になるとめまいや立ちくらみなどが起こり、酷い場合は意識を失う。ここにいる全員が似たような感じだが、特に研究者にその傾向が強いな。」
調査の最前線にいたからだろうか。
「調査に同行していた兵たちも同じか?」
「いや、兵士よりも研究者の方が内包する魔力が多かったから、兵士はそれほどでもない。彼らは精神的に疲弊している感じだな。」
「研究者の方が体内の魔力量が多かったということか?」
「ああ、それについては当然なんだ。研究者はもともと宮廷魔法士として仕えている者が大半で、今回の探索チームは魔導研究を担う職務にいるから。」
代わりに答えた兵士の回答にヒントがありそうだった。




