第4章 朋友 「relic③」
ファフが視線を向けた方角を見ると、複数の白い影が動いている。
炎球を見て蜘蛛の子を散らすように走り去ろうとするそれは、複数の人間たちに思えた。
「この地の調査に赴いていた兵士と研究者の方々ですか?」
マトリックスをホバリング状態にさせて声を張り上げた。
何らかの事象でここに閉じ込められたかの様に見える。
地上に戻るための手段がなく、この暗闇で何日も過ごしたのだろうか。しかし、それならば思いのほか問題は早く解決したといえた。
「あ、あんたたちは?」
束の間の沈黙の後、ひとりが掠れた声でそう返答する。
「国王陛下からあなた方の捜索依頼を受けた者だ。」
「陛下が···。」
救助が来た、と歓喜する雰囲気ではなかった。
「負傷者がいるのか?」
「いや、命に関わるようなケガをしている者はいない。衰弱している者は多いが。」
地底のような空間で長時間過ごしたのだ。飲食もろくにできず、精神的にまいっていてもおかしくはない。
ただ、暗くて表情までは見えないが、何か懸念があるような雰囲気ではあった。
とりあえず、警戒は解かずにマトリックスを着陸させる。
離れた位置からこちらを取り囲むように見ている兵士たちは、不思議な物を見るような顔をしていた。
「研究職らしき者たちは見えないが、動けないのか?」
「あ、ああ。我々に比べて体力がないからな。ほとんどは奥で横になっている。」
「ほとんどというと、何人かは動けるのか?」
研究職でまともに話ができる者がいるならば、遺跡のことを聞いておきたかった。
この遺跡が何なのかが非常に気になる。大した情報は引き出せなくとも、何かのヒントをくれるかもしれないのだ。
「それが···。」
兵士は歯切れが悪かった。
詳しい話を聞くと、開口部から突然大きな音が鳴り響き、外に出た途端に竜巻に巻き込まれて気がつくとここに倒れていたのだという。
普通に考えると信じ難い話だが、これまでの自身の体験から嘘であるとも決めつけられない。
彼らからは悪意も感じられず、表情を見る上でも真実味があるといえた。
しかし、地上でさらわれたのだとして、負傷者がゼロだというのが疑問を感じさせる。
竜巻がただの自然現象とは思えない。どうやって発生させたのか、なぜ彼らをさらう必要があったのかなど不明点が多い。
偶発的な天災に巻き込まれたのだと解釈するのが手っ取り早いが、一人残らず同じ目にあうというのは不自然すぎた。
さらに、何名かの研究者が奥に向かって進んでいるそうだ。彼らは憑かれたかのように制止を振り切って調査を続けており、文字通り飲まず食わずで稼働しているとのことだった。




