第4章 朋友 「相棒⑯」
「おお、天剣様。お会いできるのを楽しみにしておりましたぞ。」
国王はまだ若く、30代後半に差し掛かったというところだろうか。
政務で多忙なのか、あまり肉付きのよくない痩身だった。
しかし、か細い体型に似合わず目力が強い。精力的な野心家という印象を最初に持った。
「こちらの身勝手で謁見に訪れるのが遅くなりました。」
「いやいや、あなたの活躍は耳にしております。前回の謁見で代理を寄越されたのも、悪魔から我が国を守る一環とのこと。むしろ礼を言うべきだと思っておりますぞ。」
ずいぶんと腰の低い王だ。
これまでに出会った同じ立場の人間と比べると、まともに見えるから不思議だ。
ただ、こういった社交に通じているような権力者は実は厄介だったりする。
腹の中に秘めた本音をなかなか吐露しない傾向にあるからだ。唯一わかりやすいといえば、その目力の強さくらいだろう。
「悪魔や魔族の対処は、この国に限らず世界的な問題です。我々も規模が小さい集団ですので、後手に回っていることは否めません。」
言外に忙しいから余計な話は出すなと言ってみた。
「理解しておりますとも。先だって入城された代理の方の雰囲気を見ても、戦神ともされる天剣様が見出されたberserkrにふさわしい強者だと感じました。我が国の騎士たちを一瞥しただけで絶句させるあの視線は、今も畏怖の念が絶えないようですぞ。」
一瞥しただけでって、マルガレーテはどのような登場の仕方をしたのだろうか。
初めて会ったときのことを思い浮かべると想像に難くないが、近づくと排除するぞ的な感情を眼光にこめたのかもしれない。
外交に通じているいうよりも、相手国を威圧するような振る舞いな気がした。
まあ、いい。
「彼女は私よりも様々な面に長けています。責任感が強いので誤解されやすいとは思いますが。」
いちおう、軽くフォローしておいた。
「天剣様の寵愛を受けたおひとりということですな。」
「いえ、違いますけど。」
話が妙な方に行きそうになっている。
いや、これはこの国王の誘導か。
「今のところそういったことに時間を割いている余裕はありません。」
「ああ、そうでしたな。あまりにも美しい御方だったので品位にかけた想像をしてしまった。」
乾いた笑い声を発する国王にめんどうくささを感じた。
「本題をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
話が進みそうにないのでこの話題を切り上げさせることにした。




