第4章 朋友 「相棒⑮」
フェリたちと再び合流した。
こちらに戻る途中で悪魔憑きの集団を発見したので殲滅しておいたが、それ以外に特筆すべきことは何もない。
あまりにも静かすぎて逆に不安しか感じなかった。
その理由については思いあたることがある。
俺はこれまで、任務に関する不安は無視できる程度のものしか持ち合わせなかった。緊急事態に対処できないことはあっても、その理由が精神面であることはほとんどないといっていい。
今の俺が感じている不安は、手が届かないところで大事な存在が傷つけられ救えないことだろう。それだけこの世界で大事なものができたいうことだ。
情によって判断を鈍らせる。
エージェント時代ならそう考えたのかもしれない。
今できることは何か不穏な空気を感じたときに現地へと急行し、それを未然に防ぐか打破することである。
しかし、それは転移の有効範囲内に限られてしまう。
遠く離れた地域にいる人々に何かあった場合は、すぐに動くことなどできない。ならば、手の届く範囲は最善を尽くすしかないだろう。
あらためて情報網を再編し、迅速に動ける体制を整える必要があった。
「···以上が国王陛下との謁見内容です。」
マルガレーテからの報告を聞き、この国の国王との謁見では火急の要件がないことがわかった。やはり政治的な目論見で呼ばれただけのようだ。
「言外に何かの要望を出されたりはしなかったのか?」
「タイガ様と話したいとは遠回しに言っておられました。戻られればこの国の防衛についても助言が欲しいと。」
「無視しても大丈夫そうか?」
「こちらに矛を向けることはないでしょう。ただ、客観的に見て、無視することでアトレイク教に庇護対象から外されたと主張する者が出てくるかもしれません。」
今の俺はアトレイク教の所属、正確にいえば神アトレイクの使徒扱いされている。このまま向こうの希望を無視して国を離れれば、そういった事態にならないとは言えなかった。
謁見自体は大した時間はとられないだろう。問題はその中身によって動きを制限されることである。
国王から今後にプラスとなる話が出る可能性はあるだろうか。
俺を取り込もうというのは論外だ。では、他の国との協力体制について言及されるというのはどうだろう。
この周辺の国家間の関係値についてはあまり調べていない。
シニタ周辺諸国についての知識はあるが、こちらの方では亡国となった国についてもそれほどの情報がなかったのだ。




