第4章 朋友 「相棒⑭」
城内を手早く捜索した。
悪魔や魔族が少なからず徘徊していたため、それなりの時間がかかる。
嫁の幻影で意気消沈していたアッシュは戦闘を通じて立ち直り、今では元通りの様子を見せていた。
この男が戦闘狂なのは、嫁からのストレスを解消するためではないかというどうでもいい疑問が湧いてくる。しかし、わざわざ聞くほどの内容でもないため頭から追いやることにした。
城内では特に目立ったものはなく、あの幻影を使った悪魔の目的を知ることはできない。
明確な理由がわからないことでテトリアの動きが読めないことは残念だが、一通りの捜索を終えてから今後の動きについて考えることにした。
この都市内の悪魔については、殲滅にはまだ程遠い。王都という規模を考えると、一体残らず掃討するというのはすぐにできることではない。
「できれば全滅させてしまいたいところだな。」
「確かにそうだが、ここにいる奴らには意思を感じない。悪魔憑きと呼ばれる奴らに比べれば脅威ではあるが、指揮をする者が現れなければ他の地域に攻め込んだりしない気もするな。」
アッシュの返答通りだとは感じている。
しかし、そうだとして自立した意思を持つものや、元から悪魔だった奴らはどこに行ったのかという疑問が残った。
他にもこちらが把握していない重要なものがある気がする。
「ここの解放は後回しにして、メリッサを教会本部に届けることを優先しよう。その道程で何かが起これば対処するしかないだろう。」
「そうだな。それが妥当だと思う。」
俺たちは視界に入った悪魔だけを排除するようにしながら、城を後にした。
城外に出てもまばらにいる悪魔が視界に入るだけで、何かの待ち伏せなどはない。
こちらの動きを捕捉している者がどこかにいるはずだと思うが、マトリックスに乗って都市を後にするまで目立った気配を感じることはなかった。
完全に待ちの体制となってしまったようだ。
城にいた悪魔ブリヴェットがテトリアの鎧を模した幻影を見せたことから、その関連性を疑うより他はない。しかし、手がかりがまったく見つからなかったことにより、先手を打つという選択肢はなかった。
これが凄惨な戦いの幕開けにならないよう祈るしかない。
俺とアッシュは胸騒ぎを感じながらその場を遠ざかった。
「ずいぶんとあっさり帰したものだね。」
薄暗い部屋の中で、微動だにしない鎧がそう口走った。
『まだ時間がかかる。』
直接頭に響く声が抑揚のない口調でそう伝えてくる。
置物のような鎧は、ため息ともとれる音を発した。




