第4章 朋友 「相棒⑫」
「···仲間を人質にとられて行き詰まったのかな?時間稼ぎをしても何も変わらないよ。」
表情など見えないが、テトリアは妙に浮き足立ったようにそう言った。
「以前に幻術のようなものを使う悪魔と対峙した。そいつもおまえと似たような気持ちの悪いことを言っていたのを思い出したよ。」
「何の話をしている?」
「これが幻術の類かはわからないが、おまえがテトリアではないという確証はある。」
「その確証というのが何かはわからないけど、余計な会話をする気はないね。君は搦手でいろいろと振り回そうとする。」
「テトリアの口から『この世のすべてを破滅に追いやる』なんて言葉が出ることに違和感しかないがな。」
一瞬、返答に詰まったような気がした。
「僕の目的はそれしかないよ。」
「違うだろう。テトリアの目的はハーレムを作ることだろうが。」
「···そんなバカなこと言うわけがない。」
そんなことしか言わないバカだろうが。
「テトリアにとってはこの世の破滅なんかどうでもいいはずだ。奴は享楽的な生活を望んでいるだけ。それと、自己肯定感と自意識過剰が天元突破している。」
「何を言っている?」
「俺はテトリアの片割れだぞ。奴の思考がわからない方がおかしいだろう。」
テトリアの思考がわかるというより、本能のままに生きたらこう考えると思えばいい。崇高な意志などがあるなら、奴は邪神になど踊らされてはいないはずだ。
「··························。」
「どうした?ここまで言われて何も返せないのは、偽物だと言ってるのと同義だぞ。」
「···ど、どうしてわかった?」
最初は小さな違和感でしかなかったが、それが綻びとなって結果を導いてくれたようだ。
「そんなことより、早く正体を言え。名乗れるのは最初で最後かも知れないぞ。」
思いの外、すぐにボロを出したようだ。
テトリアがハーレム好きなのは間違いないが、それ以外に確証と呼べるものはなかったのだ。
「わ、我は錯覚の悪魔ブリヴェット。よくぞ我の術を見破っ···。」
俺は聖剣ライニングで鎧ごと奴を断ち切った。
鎧と邪悪な気配は霧が立ちのぼるかのように消えていく。
そして、その場には血の気の失せた顔で荒い息をするアッシュが残った。
本当に鎧の中に封じられていたとは思わなかったが、結果的には最善だったようだ。
聖剣ライニングは邪悪なる者のみを討つ。
もし、アッシュも一緒に断ち切ってしまっていたらマズかったが、生きているのだから深くは考える必要はないだろう。




