第4章 朋友 「相棒⑩」
「今の君にこの男は斬れないだろう?」
アッシュが憑依されたことを前提に考えると、腑に落ちないことがあった。それを明らかにしておかなければ、最悪の結末が待っている気がする。
「加護の力をどうやって攻略した?」
ストレートに聞くしかなかった。
テトリアが深い洞察や思考を持っているようには思えず、遠回しに探りを入れても答えは導けそうにない。おそらく何者かの入れ知恵、もしくはただの偶然ではないかと思えたのだ。
「ん、何だいそれは?」
ごまかしているのだろうか。
「四方の守護者は邪気を打ち消す力を持っている。おまえが憑依したのはその加護者だ。簡単に思い通りになったとは思えないのだがな。」
「···ああ、だからか。」
「何がだ?」
「僕の力のうちの何割かが使えなくなったんだよね。それに、何か不快感があるし。」
···とぼけているようには見えなかった。
もしかすると、何も考えずに憑依したのだろうか。
「どうやった?普通では考えらないのだが。」
「普通?それはそうだよ。だって僕だよ?」
何が「僕だよ?」かよくわからないが、自尊心の塊をいちいち気にしても仕方がない。
「その優れた僕がやったことを教えてくれないか?」
「お!?君もすごいと思うんだね。いいだろう。特別に教えてあげよう。」
これまでもずっと思ってきたことだが、バカは楽でいい。
話を聞きながら別の思考で対策を練ることにした。
「僕が君の仲間の体を手に入れた経緯は、それほどややこしいことじゃない。」
焦らすようにテトリアは言葉を止める。
四方の守護者の力を封じ込める手段があるのだろうか。
「鎧として廊下に飾って置いたんだよ。」
「···は?」
「この大広間に入るためには、大きな扉を開ける必要があるよね?」
爆発の影響でひしゃげて倒れていたあれだろうか。空から侵入する時に鉄の扉のようなものが視界に入ったのを思い出す。
「あそこに倒れているあれか?」
後方を指さし、そう答える。もちろん視線は外さない。
「そうそう。あれは施錠できるんだ。閂みたいなのがあって内側からね。」
敵に侵入されたときに防護壁代わりとして使うためのものだろう。わざわざ説明を聞くまでもない。
「それで?」
「あれを内側からかけて外から廊下に回った。バカな君たちが来た時にすぐに開かないようにね。」
テトリアなりの罠をしかけたということか?その稚拙な説明では意味がわからないのだが。
「僕は君の体が欲しい。でも、そう簡単にはもらえないじゃないか。恋焦がれるように欲していたんだよ。」
その言い方はやめろ···。




