第4章 朋友 「相棒⑨」
城門が見えてきた。
悪魔たちが散見されるが、重要拠点と思えるような数ではない。何ともいえない違和感が駆け巡る。
昨日今日とでかなりの悪魔を倒していた。
しかし、当初聞いていたよりも、悪魔の数が明らかに少ないと感じたのだ。
悪魔化に成功した人間がどのくらいの数だったのか、具体的なデータはない。それに、最初に攻め入った悪魔の数も、報告通りなのかはっきりとしなかった。
もしかすると、悪魔憑きのように中途半端な状態で他へと移動している可能性もある。
この場で王城から感じる邪気は、ひとつの大きな塊の様に知覚することができた。
少し離れた位置からではこのような察知はできなかった。警戒を抱かせずに誘き寄せるため、魔法で隠蔽されていた可能性すらある。
アッシュの侵入時には知覚できなかったとすると、今の状況は奴とアッシュが対峙したことによるものではないだろうか。
そこまで考えたときに、激しい爆発が起こり城の一部が吹き飛んだ。
飛び散る破片を回避するため、咄嗟に物陰へと身を隠す。
粉塵が舞う最中、爆発したところから強い邪気を感じた。
すぐに移動し、視界が開けた瞬間にマトリックスを顕現させて乗車する。
周囲を警戒しながら移動して、爆発で口を開けた城の上階へと侵入した。
爆発の軌跡をたどりながら最奥へと向かうと、謁見などに使われるであろう大広間があった。
その場所でたたずむ人影を見て、無意識に警戒が走る。
その存在は、アッシュの気配を内包していた。しかし、外見は鎧に包まれ、記憶にあるのと同じ邪気を放っていたのだ。
「やあ、遅かったね。」
頭に直接響くのは、これまでに何度も対峙してきたあの男の声である。
「························。」
「どうしたのかな。いつもの饒舌さはどこにいった?」
簡単な想像だ。
鎧だけが消え、そこに憑依したかつての所有者。
そして、先行したアッシュの気配をはらんでいる。
「まあ、気づくよねえ。共に行動した仲間なんだからさ。」
「何をした?」
「何だと思う?」
「質問を質問で返すな。」
「ふふ、珍しく怒っているようだね。それに焦りも見える。仲間の体が奪われたのだから、それくらいの反応が普通なのかもしれないね。」
アッシュは四方の守護者の加護を持っている。
その体に憑依することなど簡単ではない気がした。
しかし、現実にはそれ以外に考えられない。
時折、気配とともにアッシュの思念のようなものが頭に響いてくる。
普段からは想像もできない弱々しさで、「悪い、ミスった···」と謝罪の念を伝えてくるそれは、偽りではないのだろう。




