第4章 朋友 「相棒②」
都市跡には以前に倒した悪魔たちの亡骸はなかった。
異変に気づき回収したのだろうが、見回りが先ほど倒された一体だけというのは不思議に思える。
悪魔を倒せる人間がいるというのは、向こうにとって脅威のはずだった。
しかし、大した警戒をしていないのは、すでにテトリアによって情報がもたらされているからかもしれない。
もしくは、悪魔化した元人間たちはそういった思考ができない可能性も否定できなかった。
簡単にだが、アッシュが倒した悪魔の体を瓦礫の下に隠しておく。
「意外なほど無警戒だな。」
アッシュの言葉に所感を返しておく。
「まだ指揮を執る者がいない可能性が高いな。今のうちに内部に潜入して、奴らを削っておく方がいいかもしれない。」
確証があったわけではないが、テトリアはこちらに向かったのではないのかもしれない。
しかし、そう考えると、どこにいるのかは予想がつかなかった。
「とりあえず先に進もう。」
アッシュの返答に頷き、地下に潜る入口へと移動した。
灯りをとるための道具は持参していない。
アッシュの蒼炎が周囲をほのかに照らすので必要なかったのだ。
「特に気配は感じないが、警戒を緩めずに行こうか。」
歩を進め、最初にメリッサたちがいた避難所まで到達する。
やはり敵は一体もいなかった。
「拍子抜けだな。」
アッシュがため息をつきながらそう言う。
「心配しなくても、先に進めば敵はいる。」
「まあ、そうだな。」
再び足を動かし、教会を目指す。
さすがにアッシュとふたりなら移動が早い。
やがて教会の真下までたどり着き、しばらくそこから気配をうかがった。
すぐ近くに邪気は感じられない。
教会の外に微かだが複数の悪魔がいるのがわかった。
ゆっくりと床下から出て、教会内部を確認する。
特に異変は感じられないなと思ったときに、猛スピードでこちらにやって来る邪気を感じた。
「何かこちらに向かって来るようだ。」
「ああ、俺にもわかる。もうすぐ扉を蹴破ってくるんじゃないか?」
アッシュが言った通り、一瞬後に外に通じる扉が爆散するような勢いで破られた。
破片が扇状に飛び散り、こちらにまで飛んでくる。
アッシュが剣でそのすべてを薙ぎ払った。
そして教会に入って来た相手の姿を見て眉をひそめる。
「何だこいつは?」




